秋のフランスを満喫、のんびり巡りたい13の街

フランス街歩き

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この記事は 0 分で読めます2025年9月3日に公開

秋の気配が深まる9月。
夏の名残りの陽射しを感じながら、町歩きや美術館巡り、美味しい食事を楽しむのにぴったりの季節です。
フランスは、そんな「秋のゆったり時間」を楽しむのがとても上手。
この秋おすすめの13の街で、ゆっくりと、でも存分に秋のフランスを味わってみませんか?

1 芸術散歩を楽しむなら、ロワール渓谷の中心都市トゥールへ

Tours, France

現代アートの発信地、CCCOD
© Ville de Tours / V.Liorit - 現代アートの発信地、CCCOD

ロワール渓谷の古城めぐりの途中で、つい「ちょっと立ち寄るだけ」になりがちなトゥール。でもパリからわずか1時間、美食の国際都市としても知られるこの街は、もっとゆっくり楽しみたい場所です。

歴史地区のトゥフ石造りの街並みや中世の小路、広場を歩けば、まるで時代旅行をしているかのよう。とりわけ「プルムロー広場」(Place Plumereau 通称プルム広場)は、Lonely Planetが「フランスで一番美しい広場」と称えるほど。季節を問わずテラス席が賑わい、街の活気を肌で感じられます。

さらに現代アート好きなら外せないのが、オリヴィエ・ドゥブレ現代創作センター(CCCOD:Centre de Création Contemporaine Olivier Debré)。スタイリッシュな建物の中でアートに触れたあとは、アーティストのダニエル・ビュランがデザインしたトラムでの移動も一興です。まさに“アーティー”な街歩きが叶います。

2 ストラスブール 運河と島々をめぐるサイクリング

Strasbourg, France

アルザスの都・ストラスブール、運河がめぐる街
© AdobeStock / Inna - アルザスの都・ストラスブール、運河がめぐる街

ストラスブールが「フランスで一番の自転車都市」だということ、ご存じでしたか?
アルザスのワイン街道と花いっぱいの村々を巡る前に、まずはこの街でゆったりとペダルをこいでみましょう。

運河と島々をつなぐ小さな橋や、緑あふれる川沿いの遊歩道を進むと、歴史地区や可愛らしいプティット・フランスの街並みが現れます。どこからでも見える大聖堂が、まるで道しるべのよう。途中で自転車を降りて、ストラスブールの建築や遺産を紹介する展示スペース「5ème Lieu」に立ち寄るのもおすすめです。

宿泊は、環境に配慮したストラスブール初のエコ・ブティックホテル「Tandem」へ。サイクリストにも優しい設備が整い、旅のスタイルもサステナブルに。自転車で巡るストラスブールなら、秋の旅もぐっと心地よくなります。

3 リヨン グルメな街歩き

AdobeStock / Béatrice Prève
© AdobeStock / Béatrice Prève

トラブール(traboule)は、リヨンならではの建築要素で、建物と建物をつなぐ通路や中庭を抜ける「抜け道」のこと。
絹織物で栄えた時代、職人たちが雨に濡れずに生地や糸を運ぶために作られました。

現在も旧市街(Vieux Lyon)やクロワ・ルース地区に多く残っていて、細い路地から入り、階段や中庭を抜けて別の通りへ出るときは、ちょっとしたかくれんぼ気分。観光局のアプリ「Traboules」を使えば、歴史や建物の解説を拡張現実で楽しむこともできます。

散策の合間には、郷土料理を提供するブションでひと休み。ソーセージやクネル、サラダ・リヨネーズなど、地元の味をたっぷり堪能できます。

さらに「美食の都」らしい新名所も見逃せません。未来的な建築のミュゼ・デ・コンフリュアンスや、話題のフードコート「La Commune」や「Heat」、旧市街の「Food Traboule」で、気軽に食べ歩きを楽しめます。街歩きもグルメも両方満喫できるのが、リヨンの魅力です。

4 ナント ジュール・ヴェルヌの物語のような街歩き

Nantes, France

ナントの川辺に並ぶダニエル・ビュランの作品
© AdobeStock / Henryk Sadura - ナントの川辺に並ぶダニエル・ビュランの作品

ナントに到着したら、まず目に飛び込んでくるのは光あふれる新駅舎。マルセイユのMuCEMを手がけた建築家ルディ・リッチオッティによるパノラマ歩道橋も見どころです。

そこからは、街中に描かれた「緑のライン」に沿って歩くだけで「Le Voyage à Nantes(ル・ヴォヤージュ・ア・ナント)」がスタート。年間を通じて楽しめるアートと街歩きのルートで、約60か所の名所や隠れたスポットに出会えます。

道中には、まるでジュール・ヴェルヌの小説から飛び出してきたような巨大な機械仕掛けの象や、ユニークな機械たちが登場。さらに美しいナント城、見応えある美術館、ロワール川沿いのカフェやギャラリーが集まるハンガー・ア・バナーヌ、崖の上の展望台「ル・ネフ・ド・L’Estuaire」など、見どころが満載です。

ナントの街全体が舞台になる、この“旅”に出かけてみませんか?

5 アミアン 水上菜園をめぐるクルーズ

Amiens, France

アミアンの水上菜園〈オルティヨナージュ〉
© Adobestock / Stéphane - アミアンの水上菜園〈オルティヨナージュ〉

ネギやキャベツ、ニンジン、色とりどりの花畑の間を抜ける「水上クルーズ」、気になりませんか?
しかも、水上マーケットで生産者から直接お買い物までできるなんて!

アミアンには「オルティヨナージュ Hortillonnagesと呼ばれる浮かぶ菜園が広がり、今も野菜づくりが行われています。
伝統的な「バルク・ア・コルネ」と呼ばれる舟や電動ボート、自転車で、サン・ルー地区の運河沿いをのんびり巡れば、まるで水上の迷宮を探検している気分に。

世界最大級のゴシック様式のアミアン大聖堂からほど近い場所で、澄んだ空気と水辺の静けさ、そして秋色に染まる風景をたっぷり満喫できます。旅の途中にこんな贅沢な自然体験はいかがでしょうか。

▶ アミアン街歩き 美と歴史をたどる旅

6 ルーアン ノルマンディーの街をかけ足で満喫

Rouen, France

ルーアン旧市街にある趣あるリュテナン・オーベール広場
© Adobestock / samael334 - ルーアン旧市街にある趣あるリュテナン・オーベール広場

ジャンヌ・ダルク、印象派の画家たち、ギュスターヴ・フローベール――ルーアンには歴史や芸術をめぐる物語があふれています。
木組みの家々が並ぶ路地やグルメなマルシェを歩けば、まるで中世にタイムスリップしたよう。さらに、歩行者や自転車に開放されたセーヌ川沿いは、散策にもぴったりです。

街歩きのあとは、2020年に修復された「エトル・サン・マクロウ Aître Saint-Maclou」へ。
中世の納骨堂だった場所が、今は展示スペースやアートギャラリー、冬庭を備えた静かな憩いの場に生まれ変わっています。ルーアンでの一日を締めくくる、心休まるひとときになるはずです。

7 レンヌ ブルターニュのグルメ天国

Rennes, France

中世の面影を残すレンヌの木骨造りの家々
© AdobeStock / Laurent (Pictarena - 中世の面影を残すレンヌの木骨造りの家々

毎週土曜の朝、リス広場  place des Lices は色と香りでいっぱいに。
野菜や魚介を並べる生産者、地元のこだわり派や「良い食」を提案する人々が集まる、フランスでも最大級かつ最古のマルシェのひとつです。

ブルターニュ名物ガレット・ソーシス(そば粉クレープ+ソーセージ)はもちろん、ビストロノミー(創造的なビストロ料理)も楽しめる食文化の街レンヌ。
気になるお店を効率よく巡るなら、3時間で6軒をめぐる「Food Mood Tour」がおすすめ。試食つきで、レンヌのグルメシーンをまるごと体験できます。

さらに、毎月第1日曜には「マルシェ・ア・マンジェ Marché à Manger」が中央市場の大ホールで開催され、人気シェフやフードトラックが集結。音楽やイベントもあって、お祭り気分でグルメを満喫できます。

レンヌでは、朝から晩まで食べ歩きが止まらないかもしれません!

8 ディジョン 秋にこそ訪れたいブルゴーニュの古都

Dijon, France

カフェのテラスが並ぶフランソワ・リュード広場は、散策の休憩にぴったり
© Adobestock / Jasckal - カフェのテラスが並ぶフランソワ・リュード広場は、散策の休憩にぴったり

ブルゴーニュのブドウ畑が赤や黄金に染まる秋は、街歩きにも最高の季節。
2022年にオープンした「国際美食とワインの街」をはじめ、ディジョンは美味しいものと歴史がぎゅっと詰まった町です。

中心部はすべて歩行者専用。木組みの家々、ロマネスクやゴシックの教会、由緒ある邸宅やグルメな屋内市場をゆったり散策できます。日曜のブランチは市場のおすすめ!

ディジョンを歩くなら、幸運のシンボル「フクロウ」をたどる散策ルートがおすすめです。
ダルシー広場 Place Darcy から始まり、22のチェックポイントをめぐれば、宮殿やフィリップ・ル・ボンの塔 Tour Philippe le Bon 、美術館 Musée des Beaux-Arts など、街の見どころを余すことなく楽しめます。

9 バイヨンヌ バスク流おもてなしとお祭り気分

Bayonne, France

バスク地方バイヨンヌ、カラフルなファサードが美しい街
© Adobestock / Boris Stroujko - バスク地方バイヨンヌ、カラフルなファサードが美しい街

バスク語で「Ongi Etorri」は「ようこそ」。バイヨンヌでは、この言葉があちこちから聞こえてきます。

歴史地区にはカラフルな木組みの家々が並び、迷路のような路地や城壁、グルメな屋内市場、堂々とそびえるゴシック様式の大聖堂が旅人を迎えてくれます。

2025年には、ラファエロ、ミケランジェロ、レオナルド・ダ・ヴィンチなど貴重な作品を所蔵するボナ=エルー美術館 musée Bonnat-Helleu がリニューアルオープン予定。ルーヴルに次ぐ規模のコレクションは必見です。

それまでも、街は魅力たっぷり。ニーヴ川の両岸に広がるグラン・バイヨンヌとプティ・バイヨンヌをのんびり歩きながら、チョコレート作りを学ぶ「チョコレート巡り」や、街角アートを探す「ストリートアート巡り」にも挑戦してみては?

10 トゥールーズ ガロンヌ川と運河沿いで過ごす秋

Toulouse, France

 Adobestock / Yvann K
© Adobestock / Yvann K

トゥールーズといえば、まずはキャピトル広場 place du Capitole 。
街の中心には、サン=セルナン大聖堂 basilique Saint-Sernin やジャコバン修道院  Couvent des Jacobins 、2024年に再オープンしたアセザ館(hôtel particulier d’Assézat / Fondation Bemberg ベンベルグ財団美術館)、現代アートの宝庫レ・ザバトワール Les Abattoirs 、2023年誕生のカルチュリー市場 Halles de la Cartoucherie など、見どころがぎっしり詰まっています。

でも「バラ色の街」の魅力はそれだけではありません。ガロンヌ川沿いをゆったりと自転車で走れば、秋のやわらかな光に包まれた街の景色が広がります。プラタナス並木の日陰を抜け、川沿いの美しい館を横目に走るのは格別。途中、にぎやかなサン=ピエール広場 place Saint-Pierre やドーラード港 port de la Daurade でひと休みするのもおすすめです。

時間があれば、ぜひ世界遺産ミディ運河へ足を延ばしてみましょう。静かな水辺をたどるひとときは、都会にいながら旅情たっぷりの体験です。

11 マルセイユ 光と海に包まれる絶景散歩

Marseille, France

マルセイユの欧州・地中海文明博物館(MuCEM)
© AdobeStock / Kurlin Arts - マルセイユの欧州・地中海文明博物館(MuCEM)

カヌビエール通り Canebière を抜けて旧港に出ると、何度訪れても胸が高鳴ります。
ノーマン・フォスター設計の巨大ミラーの下で空を映したり、港の光景を眺めたりするだけで特別な時間。

左手の丘には「ボンヌ・メール (ノートルダム・ド・ラ・ガルド聖堂)」が街を見守り、右手には歴史あるパニエ地区が広がります。
路地を抜け、カフェのテラスやクリエイターのショップを覗きながら歩けば、やがて海上の橋を渡ってマルセイユの象徴Mucem(ヨーロッパ・地中海文明博物館)へ。

コンクリートのレースのような外観はフォトスポットとしても人気。展覧会がなくても、屋上の回廊から地中海と青空を一望する体験は必見です。最後は、2022年に公開されたコスケール洞窟の復元展示を収めたヴィラ・メディテラネへ。マルセイユの光と海、歴史とアートをたっぷり堪能できます。

12 アジャクシオ サンギネール諸島まで足をのばすコルシカの秋

Ajaccio, France

夕陽に染まるアジャクシオ沖のサンギネール諸島
© AdobeStock / Laura - 夕陽に染まるアジャクシオ沖のサンギネール諸島

コルシカ島では、夏の名残が10月、時には11月まで続きます。そんな「秋のバカンス」がぴったりなのが、アジャクシオとその美しい湾。

街歩きでは、ナポレオン生誕の地らしく、フォッシュ広場 place Foch からナポレオンの生家、そしてイタリア絵画コレクションが充実したパレ・フェッシュ美術館 Palais Fesch へとめぐる「ナポレオンゆかりのルート」がおすすめです。

自然派なら「クレートの小道 sentier des Crêtes 」へ。ミルト(地中海特有の香り高い低木)やシスト(ピンクの花を咲かせる香りのよい低木)、イモーテルの香りに包まれながらハイキングを楽しめます。

そして夕暮れ時には、アジャクシオ湾とサンギネール諸島が夕日に染まる絶景が待っています。空と海がオレンジに溶け合う瞬間は、きっと忘れられない旅の思い出になるはずです。

13 パリ この秋もときめく光の都へ

Paris, France

黄金色に染まる木々とセーヌ川、秋のパリ
© AdobeStock / Samott - 黄金色に染まる木々とセーヌ川、秋のパリ

まずどこから始めましょう?カルナヴァレ歴史博物館?コンコルド広場のマリン邸?ブルス・ド・コメルスのピノー・コレクション?それとも、デパート「ラ・サマリテーヌ」でショッピングやグルメ?

パリはいつ訪れても魅力的ですが、木々が黄金色に染まる秋は格別にロマンチック。公園や庭園の並木道を歩けば、まるで映画のワンシーンのようなひとときです。

芸術、歴史、ショッピング、美食…どれから楽しむか迷うほど。パリが再びあなたを夢中にさせる季節がやってきました。

by フィリアトル パスカル

旅行ジャーナリスト。未知なるフランスをご紹介します。 [email protected]

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