より遠くへ、より高くへ。自然との一体感を味わいながら、フランス各地の素晴らしい景色に出会える――それもまた、自転車旅の醍醐味です。
2026年のツール・ド・フランス(男子・女子)の公式ルートに着想を得て、ピレネー山脈からパリまで、ジュラ山地、ヴォージュ山脈、アルプスを経由する絶景サイクリングルートをご紹介します。
大会は2026年7月4日に開幕。プロ選手たちが駆け抜ける道を、自分のペースで旅してみませんか。
ツール・ド・フランス男子の足跡をたどって
ピレネー山脈 ― 自然を全身で感じるサイクリング
なだらかな山麓から壮大な氷河圏谷まで、多彩な景観が広がるピレネー山脈。森や渓谷、山々の間を縫うように道が続き、経験豊富なサイクリストには本格的なヒルクライム、家族連れには谷沿いの穏やかなルートがおすすめです。
2026年大会で最初に登場するフランスの山岳リゾート レ・ザングル(Les Angles)周辺では、標識が整備されたコースをたどりながら、カタルーニャ・ピレネーの美しい風景を満喫できます。
ツール・ド・フランスでは、選手たちもこのリゾートまで登坂。2026年大会第3ステージの集団は、7月6日にこの険しい坂へ挑みます。当日は音楽やバンダ(ブラスバンド)、地元グルメ、自転車関連イベントなどで街全体が祝祭ムードに包まれる予定です。
ピレネー山脈のふもとに位置するポー(Pau)では、家族連れならポーとルルドを結ぶサイクリングルート「ヴェロシュッド(Vélosud)」の一部区間がおすすめ。川沿いを走る約10kmののどかなコースです。
7月9日の第6ステージでは、ポーからガヴァルニー渓谷(Vallées de Gavarnie)まで、選手たちの軌跡をたどることができます。
脚に自信のある方は、ぜひ次の名物峠にも挑戦してみてください。
- サント=マリー=ド=カンパン(Sainte-Marie-de-Campan)側から登るツールマレー峠(Col du Tourmalet):壮大な景色の中を進む伝説的なヒルクライム。
- ガヴァルニー=ジェードル(Gavarnie-Gèdre)への登り:ユネスコ世界遺産に登録されているガヴァルニー圏谷の麓まで続く、粘り強さが求められるコースです。

ボルドー ― ブドウ畑を駆け抜けるサイクリング
一転して舞台はボルドー(Bordeaux)周辺へ。
メドック、サンテミリオン、グラーヴ地区のブドウ畑に囲まれた直線道路が続き、のんびりとしたサイクリングに最適です。整備されたガロンヌ川沿いの遊歩道も、街歩きのスタートにぴったり。
7月10日の第7ステージでは、新しいシモーヌ・ヴェイユ橋(Pont Simone-Veil)を渡った選手たちが、ガロンヌ河岸を猛スピードで駆け抜けます。
その後は、フランス最大の広場 カンコンス広場(Place des Quinconces)へ。フィニッシュ地点にもなるこの場所で、選手たちに負けない気分でスプリントを楽しんでみてはいかがでしょうか。

オーヴェルニュ ― 火山が織りなすダイナミックなヒルクライム
次なる舞台は、オーヴェルニュ地方のカンタル県。
フランス革命記念日にあたる7月14日、第10ステージではオーリヤックからル・リオラン・スキーリゾートまで、急勾配の登りと壮大な火山地形が続くチャレンジングなルートが待ち受けています。コースには標高1,336mのグリフール峠(Col de la Griffoul)や、オーヴェルニュを代表するピュイ・マリー(Puy Mary/パ・ド・ペロル)も含まれ、脚力自慢にはたまらないステージです。
翌7月15日には、ツールは世界遺産の温泉保養都市ヴィシー(Vichy)をスタート。19〜20世紀の優雅なヴィラが立ち並ぶ街並みを眺めながら、ナポレオン3世公園やケネディ公園でピクニックを楽しむなど、ゆったりとしたサイクリングもおすすめです。

ジュラ山地 ― 森と平野を結ぶ穏やかな道
ドール(Dole)周辺では、ユーロヴェロ6(EuroVelo 6)や、ドールとモン=スー=ヴォードレを結ぶ全長18kmの安全なサイクリングロードグレヴィ街道(Voie Grévy)を通って、森や川沿いの景色を楽しめます。
7月17日には、第13ステージがドールをスタートしベルフォールへ向かいます。この機会に、運河やノートルダム参事会教会、そしてルイ・パスツールの生家など、街の歴史ある見どころも訪れてみましょう。
なお、ジュラ山地は女子大会でも登場し、8月3日にはポリニー(Poligny)がステージのゴール地点となります。

ヴォージュ山脈 ― 緑豊かな山岳風景を満喫
ヴォージュ山脈を象徴するル・マルクシュタイン(Le Markstein)は、豊かな自然に囲まれた美しいヒルクライムスポットです。
7月18日に行われる第14ステージ(ミュルーズ〜ル・マルクシュタイン)は、累積標高差3,800mを誇るヴォージュ山脈最大の山岳ステージ。選手たちは序盤から21.5kmにおよぶグラン・バロン(Grand Ballon)への登坂に挑みます。
終盤にはサン=タマランを経由し、平均勾配7.3%・11.2kmのアーグ峠(Col du Haag)を越えて、マルクシュタイン・フェルラン駅へとフィニッシュします。

アルプス ― 伝説の舞台へ
7月21日、男子ツール・ド・フランスではエヴィアン=レ=バン(Évian-les-Bains)からトノン=レ=バン(Thonon-les-Bains)までの個人タイムトライアルが開催されます。レマン湖畔の美しい景色が広がり、家族連れには平坦なヴィアローナ(ViaRhôna)の一部区間でのサイクリングもおすすめです。
そして7月25日の第20ステージでは、ブル=ドワザン(Bourg-d’Oisans)を出発し、21のヘアピンカーブで知られる伝説のアルプ・デュエズ(Alpe d’Huez)へ。累積標高差5,600mという壮絶な山岳ステージが繰り広げられます。

南アルプス ― 光あふれる山岳風景
南アルプスでは、山々がより明るく開放的な表情を見せます。
7月23日にはオルシエール=メルレット(Orcières-Merlette)で山頂フィニッシュが行われ、翌日はギャップ(Gap)をスタート。選手たちは標高1,248mのバイヤール峠(Col Bayard)を越えて進みます。
この地域を訪れる際には、「シャンソールの壁(barre du Champsaur)」と呼ばれる気象現象にも注目。谷間を覆う雲海がバイヤール峠付近まで広がる一方で、ギャップ市街は青空に包まれていることもあります。
また、ギャップのオート=アルプ工芸エコミュージアムでは、木靴職人や鍛冶職人、車輪職人など、この地域に受け継がれる伝統技術に触れることができます。

パリ ― モンマルトルを駆け下りてフィナーレへ
7月26日、最終第21ステージでは、男子ツール・ド・フランスがパリ伝統のフィニッシュを迎えます。
トワリー(Thoiry)をスタートした選手たちは、モンマルトルの丘(Butte Montmartre)やルピック通り(Rue Lepic)を何度も駆け抜けます。これらのコースは2024年パリオリンピックでも大きな注目を集めました。
そして最後は、シャンゼリゼ通り(Avenue des Champs-Élysées)で華やかなスプリントフィニッシュを迎えます。

ツール・ド・フランス女子の注目ルート
ブルゴーニュ ― ワイン街道を巡る旅
ブルゴーニュは、友人同士で楽しむグルメ&カルチャーサイクリングにぴったりのエリアです。
8月4日の第4ステージでは、ジュヴレ=シャンベルタン(Gevrey-Chambertin)からディジョン(Dijon)まで21kmの個人タイムトライアルを実施。ブロション、フィサン、クシュ、マルサネ=ラ=コートを経由し、名高いグラン・クリュ街道(Route des Grands Crus)を走ります。
翌8月5日には、選手たちはマコン(Mâcon)を出発し、ボジョレーの丘陵地帯を越えてベルヴィル=アン=ボジョレ(Belleville-en-Beaujolais)を目指します。
家族連れなら、マコン周辺のソーヌ川沿いを走るヴォワ・ブルー(Voie Bleue)がおすすめ。時間があれば、コート・ド・ニュイやコート・ド・ボーヌのブドウ畑、美しい城壁都市ボーヌ(Beaune)にも足を延ばしてみましょう。

プロヴァンス ― モン・ヴァントゥへの挑戦
8月7日、第7ステージ(ラ・ヴルト=シュル=ローヌ〜モン・ヴァントゥ)は、大会屈指の山岳ステージとなるでしょう。
選手たちはベドワン(Bédoin)側から、最も厳しいルートでモン・ヴァントゥ(Mont Ventoux)に挑みます。自分で登るなら、より距離は長いものの比較的走りやすいソー(Sault)側ルートもおすすめです。
夏場は暑さが厳しく、山頂では強風が吹くこともあるため注意しましょう。
翌8月8日には、シストロン(Sisteron)からニースへ向けて出発します。デュランス川を見下ろす堂々たる城塞が印象的なシストロンは、「オート=プロヴァンスの真珠」とも呼ばれる美しい町です。

コート・ダジュール ― 地中海を望むフィナーレ
8月9日、ツール・ド・フランス女子はニースでフィナーレを迎えます。
最終ステージは全長99kmの周回コースで、エズ峠(Col d’Èze)を4回越えるハードな設定。選手たちは最後にプロムナード・デ・ザングレ(Promenade des Anglais)で歓喜のゴールを迎えます。
旅人なら、エズ峠は一度だけゆっくり登り、地中海を一望する絶景を満喫したあと、美しい海でひと泳ぎするのがおすすめです。


by Raymond Marie
Journaliste tourisme et culture, Marie a un vrai péché mignon : rédiger partout mais surtout pas dans un bureau. Elle s’inspire de l’air du temps et du mouvement.








