夏のフランスを彩る一大イベント、ツール・ド・フランス。 毎年、マイヨ・ジョーヌ(maillot jaune)を先頭にフランス各地を駆け抜ける選手たちの姿に、沿道は熱狂に包まれます。 2025年の男子レースは、7月5日にリールをスタートし、7月27日にパリ・シャンゼリゼでクライマックスを迎えます。 女子レース「ツール・ド・フランス・ファム」は、7月26日から8月3日まで、ブルターニュからアルプスへとつながるルートで開催されます。
2025年 ツール・ド・フランスのコース
2025年のツール・ド・フランスは、北フランスの中心都市リールでのグランデパール後、全行程をフランス国内のみで構成したルートで開催されます。
総走行距離は3,320km、全21ステージ。2級以上の山岳コースが26カ所、山岳ステージは6つ、標高の高いゴールも5つと、見応えたっぷりの展開が期待されます。
スタート後はアミアンを経由し、ノルマンディー地方へ。ルーアン、カーン、バイユーといった名所を巡り、サン・マロからブルターニュ地方を走り抜けます。
続いてコースはロワール渓谷方面へ。シノンの古城をかすめ、さらに南へと進んでオーヴェルニュ地方のピュイ・ド・サンシーの登坂に挑みます。
その後はトゥールーズ、モンペリエと都市を巡り、カルカソンヌでの壮麗なフィニッシュを経て、ピレネー山脈へ。オータカム、ペイラギュード、リュション=シュペール=バニェールといった名高い峠が選手たちを待ち受けます。
「プロヴァンスの巨人」とも呼ばれるモン・ヴァントゥを登った後は、ローヌ渓谷を北上し、アルプスとジュラ山脈で決戦へ。クールシュヴェルやラ・プラーニュ、ロズ峠などにゴールが設定されています。
ナンチュアからポンタルリエへと至る翌日のステージでは、ジュラ地方の美しい湖と山なみが楽しめることでしょう。
なお、2024年はパリ五輪の影響で外れていたシャンゼリゼ通りが、2025年の「グラン・ブークル(Grande Boucle:ツール・ド・フランスの愛称)」のフィナーレを華やかに飾ります。

少し歴史を振り返って
ツール・ド・フランスは、1903年に始まった世界的に有名な伝説の自転車レースです。
当時、スポーツ新聞『ロト・オート(L’Auto)』の編集長アンリ・デグランジュが、自紙の販売促進のために考案したのがきっかけでした。
その試みは大成功となり、2度の世界大戦による中断を除き、100年以上にわたって世界中の選手たちが毎年フランスに集い、あこがれの「マイヨ・ジョーヌ(個人総合優勝者に与えられる黄色いジャージ)」を目指して激闘を繰り広げています。
この大会は190以上の国で中継され、世界中の何百万もの人々が観戦する、まさに一大スポーツイベントです。
歴代で5度の優勝を誇る選手は、ジャック・アンクティル、エディ・メルクス、ベルナール・イノー、ミゲル・インデュラインの4名。
そして昨年(2024年)は、スロベニア出身のタデイ・ポガチャル選手が3度目の総合優勝を果たしました。
フランスの風景美を味わう機会
ツール・ド・フランスの魅力は、レースだけにとどまりません。
この大会は、沿道で応援する人々やテレビの前の観客にとっても、フランス各地の多様で美しい風景を楽しめる特別な機会です。
海沿いの道、山岳地帯、緑豊かな田園風景、趣ある街や村──毎ステージが絵葉書のような景色を背景に展開されます。
2025年大会では、ノルマンディーのバイユー、ロワール渓谷のシノン、オーヴェルニュのピュイ・ド・サンシーなど、およそ10カ所の新しい町や名所が初めてルートに登場します。
まさに“フランスの真ん中を駆け抜ける、美しい旅”となることでしょう。

女性たちのツール・ド・フランス
2022年に復活した「ツール・ド・フランス・ファム(Tour de France Femmes)」により、“グラン・ブークル”は女性の舞台へも広がりを見せています。
この大会は、元フランス国内ロードレースチャンピオンであり、テレビ解説者としても活躍するマリオン・ルスがディレクターを務めています。
2025年大会では、世界トップクラスの女性サイクリストたちが、7月26日にブルターニュ地方のヴァンヌを出発し、フランス各地を巡る全長1,000km超のコースに挑みます。
コースはまず、ブレスト Brest 、カンペール Quimper、ラ・ガシー La Gacilly といったブルターニュの街々を通過。続いて、アンジェ Angers やソミュール Saumur などの名城が点在するロワール渓谷を横断し、ポワティエ近郊のフュチュロスコープ、さらにはクレルモン・フェラン Clermont-Ferrand に広がるオーヴェルニュ火山地帯の自然公園へと向かいます。
そして大会の終盤3日間は、アルプス越えという大きな山場が待ち受けています。なかでもマドレーヌ峠を含む山岳ルートは、激しい攻防が期待される難所です。
最終ステージは、プラ・シュル・アルリ Praz-sur-Arly からシャテル Châtel まで。メジェーヴ Megève 、サモアン Samoëns 、モルジヌ Morzine といった人気の山岳リゾート地を通過するこの区間は、多くの注目を集めることでしょう。
さあ、栄冠を手にするのは誰でしょうか?
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by Prigent Blandine