1925年、パリで開催された「現代装飾美術・産業美術国際博覧会」の100周年を記念し、フランス北東部の街ナンシーでは、2025年を通してアール・デコと1920〜30年代の文化をテーマにしたさまざまな企画が展開されます。ナンシーで、アール・デコの息吹を感じる特別な時間をお楽しみください。

アール・ヌーヴォーからアール・デコへ ― スタイルの進化をたどる
アール・デコという様式は1925年以前から存在していましたが、パリで開催された「現代装飾美術・産業美術国際博覧会」がきっかけで世界的にその名が知られるようになり、アール・ヌーヴォーの植物モチーフで曲線的な特徴から一線を画す新しいスタイルとして一気に国際的な広がりを見せました。
アール・ヌーヴォーが自然を忠実に、あるいは装飾的に表現するのに対し、アール・デコは1920年代には幾何学的な形の洗練されたスタイルへと発展し、1930年代には装飾性を次第にそぎ落としていきました。これは、やがて台頭するモダニズムの先駆けともいえる動きでした。
1925年の博覧会には約150のパビリオンが設けられましたが、出展したフランス国内の都市や地域はわずか10ほど。ナンシーもそのひとつであり、自らの芸術家や職人たちの卓越した技術と美意識を披露しました。彼らの多くは「ナンシー派(École de Nancy)」の出身で、マジョレル、ドーム兄弟、そしてグリュベールといった名匠たちはアール・ヌーヴォーからアール・デコへの転換を積極的に受け入れました。

このような歴史的遺産の顕彰にとどまらず、2025年のナンシーでは「Métro’Folies(メトロフォリー)」と題したイベントを通して、当時のライフスタイル――技術革新、スポーツ、ガストロノミー(美食)など――や、音楽・映画・グラフィックアート・ファッションといった1920〜30年代を彩った芸術表現にも光を当てていきます。
さらにこの取り組みは、1920年代と現代を対比しながら、社会の変化を見つめ直すきっかけを私たちに与えてくれることでしょう。
Métro’Foliesについて詳しくはこちらをご覧ください(フランス語)
注目イベント
『ナンシー 1925』展
📅 2025年10月17日~2026年2月15日
スタニスラス広場に面するナンシー美術館(Musée des Beaux-Arts)では、1925年の博覧会のナンシーパビリオンを再現しながら、当時の暮らしや芸術家たちの軌跡をたどる展覧会を開催。アール・ヌーヴォーからアール・デコへの移行を体感できる貴重な機会です。
光と音のプロジェクションマッピング
📅 2025年6月13日〜9月14日
世界遺産スタニスラス広場では、毎夏、歴史的建造物を舞台にした壮大なプロジェクションマッピングが開催されます。
期間中は毎晩上映予定。最先端のデジタル演出で、アール・デコの世界観も表現される予定です。

アール・ヌーヴォーとアール・デコの貴重な建築遺産をめぐる
ナンシーは、フランスにおけるアール・ヌーヴォーの都としてすでに広く知られています。市内には約50棟のアール・ヌーヴォー建築が点在し、なかでも「マジョレル邸」は、20世紀初頭の高度な職人技を今に伝える代表的な建物です。

ナンシー美術館(Musée des Beaux-Arts)に展示されている約300点のドーム社のガラス作品は、ナンシー派美術館(Musée de l’Ecole de Nancy)の名品群とともに、当時の芸術の粋を感じさせてくれます。

一方であまり知られていませんが、ガラス工房ドーム社、家具職人であり金属工芸家でもあるルイ・マジョレル、そしてパリのギャラリー・ラファイエットの大ドーム天井でも知られるステンドグラス作家ジャック・グリュベールといったナンシーゆかりの芸術家たちは、1920~30年代にはアール・デコ様式による作品も数多く手がけていました。

ナンシーで訪れたい、アール・ヌーヴォー&アール・デコの名建築10選
- ① マジョレル邸
アール・ヌーヴォーを代表する名邸。
水〜日曜の午後公開、要予約。ご予約はこちらから(英語) - ② ナンシー商工会議所
平日に内部の見学が可能。ジャック・グリュベールによる美しいステンドグラスは必見。 - ③ クレディ・リヨネの天窓
当時の銀行建築に見られるアール・デコの装飾が魅力。

- ④ ブラッスリー・エクセルシオール
歴史あるレストランで、アール・デコ建築と美食を一度に楽しめるスポット。

- ⑤ 旧レユニ百貨店(現プランタン百貨店)
往年の百貨店建築に見る装飾の美しさ。

- ⑥ マジョレル商会の旧店舗(サン=ジャン通り)
家具職人マジョレルが手がけた建築のひとつ。 - ⑦ ソルプ公園 (Parc de Saurupt) 周辺の住宅街
高級住宅街に点在するアール・ヌーヴォー/アール・デコ様式の邸宅を散策。

- ⑧ ロレーヌ大学本部棟(旧ポン=ア=ムッソン本社)
吹き抜けを彩るグリュベールの 巨大ステンドグラスが圧巻。 - ⑨ ベルジェレ館
ナンシー派の精神を受け継ぐ邸宅。内部装飾も見ごたえあり。 - ⑩ パッサージュ・ブルー(青のアーケード)
市内中心部にある歴史的ショッピングアーケード。アール・デコの装飾が随所に。

ナンシーの甘いお土産「Nancy Passions Sucrées」
ベルガモットキャンディやマカロン・ド・ナンシー、ガトー・サン・テプヴル(gâteau Saint-Epvre)、ラム酒のババなど、地元の銘菓を集めたブランド「Nancy Passions Sucrées ナンシー・パッション・シュクレ」。
軽くて持ち帰りやすく、贈り物にもぴったり。映画『アメリ』の監督ジャン・ピエール・ジュネも、ナンシーのベルガモット缶を作品内で登場させています。


日本語でナンシーを楽しもう!
ナンシーの街をより深く楽しんでいただけるよう、日本語対応の観光ツールもそろっています。
- 日本語版公式サイト
- 日本語ガイド付き観光案内
アール・ヌーヴォー建築の散策ルートや歴史的中心地、美術館、公園や庭園など、訪れるべきスポットを紹介する日本語版の観光ガイド(PDF形式)をオンラインでダウンロードできます。 - 日本語オーディオガイド
スタニスラス広場の観光案内所で無料でレンタルできるほか、無料でダウンロードも可能です。 - 日本語ナレーション付きミニトレイン観光
- 日本語ガイド付きプライベートツアーも予約可能
お得な「ナンシー・シティパス」もおすすめ!
主要美術館の入場無料、日本語オーディオガイドやミニトレイン乗車、さらにさまざまな割引が受けられます。

by France.fr編集部
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