ボルドーのカヌレやブルターニュのクイニー・アマンは、日本でもすっかりおなじみ。最近では、アンジェの青いチョコレート「ケルノン・ダルドワーズ」も話題になりました。 でも、まだまだ知られざるフランスの郷土菓子があるんです。 今回は各都市の観光局スタッフに、地元自慢のスイーツを教えてもらいました。 全部知っていたら、かなりのフランス通かも?
エクス・アン・プロヴァンスのカリソン Calisson d'Aix
Aix-en-Provence, France
エクス・アン・プロヴァンスの名物菓子「カリソン」は、砂糖漬けにしたメロンと細かく砕いたアーモンドを練り合わせたペーストに、粉砂糖と卵白で作った糖衣をかけた、繊細でやさしい味わいのお菓子です。
舟のような形が特徴で、15世紀からこの地で愛され続けてきた伝統の一品。
その誕生にはちょっと素敵なエピソードもあります。
当時のプロヴァンス伯・ルネ・ダンジュー(“善王ルネ”として知られる)が、ジャンヌ・ド・ラヴァルとの2度目の結婚式で、笑顔を見せなかったジャンヌを喜ばせようと特別に作らせたのが、このカリソンだったと伝えられています。
甘さの中に、物語と歴史がぎゅっと詰まったお菓子です。
➡ 【エクス・アン・プロヴァンスの郷土菓子、カリソン作りの秘密】
➡ エクス・アン・プロヴァンス観光局公式サイト「カリソンとは」(フランス語)
アンジェのケルノン・ダルドワーズ Quernon d'ardoise
Angers, France
アンジェを訪れたなら、「ケルノン・ダルドワーズ」を味わわずに帰るのはもったいない――それほど、この街を代表するユニークなお菓子です。
薄く仕上げた四角いアーモンド入りのヌガティンを、鮮やかな青色のチョコレートでコーティング。見た目のインパクトも抜群です。
名前の「アルドワーズ」とは、この地方の屋根に使われるスレート(粘板岩)のこと。その形を模して作られているのも、このお菓子のユニークなポイントです。見ても食べても楽しい、アンジェならではの一品です。
➡ Les Quernons d’ardoise公式サイト(フランス語)
ミュールーズのブレダラ Bredala
Mulhouse, France
ブレダラ(またはブレデル、ブレデラ)は、クリスマス前のアドベント(待降節)の時期に作られる、小さなビスケット。アルザス地方では、この時期の風物詩として親しまれています。
レシピは家庭ごとにさまざまで、バターやシナモン、アニス、くるみ、ヘーゼルナッツなど、香り豊かな素材が使われます。
家族でブレダラを焼きながらクリスマスを待つのが、アルザスのあたたかな伝統。ですが、美味しいブレダラは、クリスマスマーケットでも手に入れることができます。ほっこりとした甘さと香ばしさが、この季節にぴったりです。
➡【アルザス地方で必ず訪れたいクリスマス・マーケット5選】
アヴィニョンのパパリーヌ Papaline d’Avignon
Avignon, France
このチョコレート菓子は、1960年にヴォークリューズ県の菓子職人たちによって考案された、アヴィニョンを代表する銘菓です。
名前にある「Pap(教皇)」の通り、14世紀にアヴィニョンに教皇庁が置かれていた歴史をしのばせる一品となっています。
赤いアザミをかたどった美しい形のこのお菓子は、2種類のチョコレートでコーティングされており、ヴァントゥー山の斜面に自生する約60種の薬草を漬け込んだリキュール「オリガン・デュ・コンタ」の風味が染み込んでいます。
味わいとともに、アヴィニョンの歴史や土地の恵みを感じられる、特別なひと粒です。
➡ 【気ままに楽しむ旅:アヴィニョン 教皇宮殿を見学したことがないなんて!】
ボルドーのカヌレ Canelé de Bordeaux
Bordeaux, France
日本でもすっかりおなじみになった「カヌレ」は、フランス南西部・ボルドー生まれのお菓子。
波型の愛らしいフォルムは、この街の気品や美しさをそのまま表しているかのようです。
ラム酒とバニラがふんわり香る、外はカリッと中はもっちりとしたカラメル風味の小さなお菓子は、ついつい手が伸びる美味しさ。
旅先のパティスリーで見かけたら、ぜひいろいろなお店の味を食べ比べてみたくなりますね。
➡ 【注目の品:カヌレ】
➡ ボルドー観光局公式サイト「カヌレ」(英語)
ディジョンのノネット Nonnettes
Dijon, France
ディジョンのノネットは、ディジョン名物のパン・デピス(小麦粉とハチミツをベースにしたスパイスケーキ)の中にジャムを詰め、外側をシュガーコーティングした素朴な郷土菓子です。
老舗「ミュロ・エ・プティジャン」が、今も伝統的な製法で丁寧に作り続けています。
この名前は、かつてこのお菓子を作っていた若い修道女(nonnette)にちなんだもの。
最近では、中のフィリングがジャムだけでなくキャラメルやチョコレートになっているものもあり、バリエーションも豊富。さらに、あえて中身を入れずに焼き上げ、エポワスなどのチーズを詰めてオーブンで焼けば、甘くない一品料理としても楽しめます。
グルノーブルのクルミのタルト Tarte aux noix
Grenoble, France
グルノーブル周辺のイゼール県・ドーフィネ地方は、フランス有数のクルミの名産地。中でも「グルノーブル・クルミ」は、1938年にAOP(原産地保護呼称)に認定されるほどの品質を誇ります。
この地を代表するスイーツといえば、もちろんそのクルミをたっぷり使ったクルミのタルト。
サブレ生地の中に、クルミと生クリーム、バター、砂糖、ハチミツを混ぜた濃厚なフィリングがぎっしり詰まっていて、香ばしさと優しい甘さがたまりません。
実はこれ、甘いお菓子としてだけでなく、地元産のチーズ(ブルー・デュ・ヴェルコールやサン・マルセランなど)を合わせて焼く、塩気の効いたお食事用バージョンもあるんです。
甘くても、しょっぱくても美味しい。グルノーブルならではの、奥深いクルミの魅力が詰まった一品です。
➡【イゼール県の聖地ノートル=ダム・ドゥ・ラ・サレットと、自然ペイ・ドゥ・コール】
➡ グルノーブル・アルプ観光局公式サイト(英語)
ラ・ロシェルのガレット・シャランテーズ Galette charentaise
La Rochelle, France
ラ・ロシェルの伝統菓子「ガレット・シャランテーズ」は、小麦粉、卵、バター、そしてアンゼリカ(セリ科の植物)の砂糖漬けから作られる、やさしい味わいのサブレです。
その歴史は1848年にさかのぼり、柔らかな食感と素朴な風味で、世代を越えて長く愛されてきました。
最近では、フルーツ入りや塩キャラメル風味など、さまざまなバリエーションも登場し、地元でも人気が続いています。
➡ ラ・ロシェル観光局公式サイト(英語)
リールのゴーフル Gaufres
Lille, France
フランス最古の菓子店として知られる、1761年創業のメール Méert が手がけるゴーフルは、これまでにド・ゴール将軍やウィンストン・チャーチル、ジャクリーン・ケネディ、歌手アラン・スーション、作家アメリ・ノートンなど、名だたる人物たちを魅了してきました。
定番は、薄くて平たいゴーフルにマダガスカル産バニラのクリームをサンドしたものですが、現在ではバリエーションも豊富。スペキュロス、ピスタチオ、ラムレーズン、ライスパフ入りプラリネなど、さまざまな味が楽しめます。
マルセイユのナヴェット Navette de Marseille
Marseille, France
マルセイユの伝統菓子といえば、200年以上前から受け継がれてきた、舟の形をした硬めのビスケット。
ほんのりとオレンジの花の香りが漂い、日持ちするのも特徴です。
もともとは2月2日の「聖マリアのお潔め(ラ・シャンドルール)」の日に食べられるものですが、地元ではこの素朴な味わいが愛され、季節を問わず楽しむ人も少なくありません。
ナントのガトー・ナンテ Le Gâteau Nantais
Nantes, France
ナントの銘菓といえば、ラム酒とレモンが香るケーキに砂糖のグレーズをかけた「ガトー・ナンテ」。
18世紀、三角貿易で栄えた港町だったナントには、アンティーユ諸島からサトウキビやラム酒、ブルボンバニラが運ばれてきました。
これらの贅沢な食材が、この上品なお菓子の誕生につながったとされています。
現在では、ナントのパティスリーでさまざまなアレンジを楽しむことができ、地元の人々にも長く愛され続けています。
➡【味覚を刺激するナントのレストラン5選】
➡ ナント観光局公式サイト「ガトー・ナンテのレシピ」(フランス語)
ニースのタルト・オ・シトロン La tarte au citron
Nice, France
ニースの名物といえば、レモンタルト。
太陽の恵みをたっぷり受けた地元産のレモンをふんだんに使った、爽やかな味わいのお菓子です。
地元の食材を使い、伝統的なレシピを守って料理や食品を提供する店に与えられる認証「キュイジーヌ・ニッサルド」のラベルを持つお店でも、このレモンタルトが扱われています。
ニースらしい味を楽しむなら、ぜひ試しておきたい一品です。
ニームのクロッカン・ヴィラレ Les Croquants Villarets
Nîmes, France
ニームの老舗菓子店「メゾン・ヴィラレ Maison Villaret」で、1775年から門外不出のレシピで作られているのが「クロカン・ヴィラレ」。
こんがりと焼き上げられた小さなビスケットは、カリッとした歯ごたえが魅力。紅茶やコーヒーに浸して、ほろっとした食感を楽しむのもおすすめです。
シンプルながら、一度食べたら忘れられない、ニームの隠れた名菓です。
➡ メゾン・ヴィラレ Maison Villaret (フランス語)
ポワティエのマカロン・ド・モンモリヨン Macarons de Montmorillon
Poitiers, France
ポワティエの銘菓といえば、「マカロン・ド・モンモリヨン」。
老舗「ラヌー・メティヴィエ Maison Rannou-Métivier」が200年前から、代々受け継がれる秘伝のレシピを守り続けてきたアーモンド菓子です。
ひと口かじれば、アーモンドのやさしい風味がふんわりと広がり、素朴でありながら深い味わいが楽しめます。季節ごとに限定フレーバーが登場するのも人気の理由のひとつです。
この伝統を大切に守りながらも時代に合わせて進化を続ける姿勢が評価され、店舗は「今に生きる伝統企業(Entreprise du Patrimoine Vivant)」の認証も受けています。
➡ ラヌー・メティヴィエ公式サイト(英語)
レンヌのクイニー・アマン Le Kouign Amann
Rennes, France
レンヌを訪れたら、ぜひ味わいたいのがブルターニュ名物の「クイニー・アマン」。
パン生地にたっぷりのバターと砂糖を折り込んで重ね、パイのように焼き上げたお菓子です。
焼くことで表面は香ばしくキャラメリゼされ、外はカリッと、中はしっとり。ひと口ごとにバターの風味と甘さが広がる、なんとも贅沢な味わいです。
名前の「クイニー(Kouign)」はブルターニュ語で「お菓子」や「ブリオッシュ」、「アマン(Amann)」は「バター」を意味しており、その名の通りバターを惜しみなく使ったご当地スイーツです。
➡レンヌ観光局公式サイト(フランス語)
サン・テティエンヌのビューニュ Bugnes de Saint-Etienne
Saint-Étienne, France
Carnaval(カルナヴァル)の季節が近づくと、町じゅうに揚げ菓子の甘い香りが広がり、なんとも幸せな気分になります。
サン・テティエンヌでは、特に「ビューニュ」と呼ばれる、ふっくら柔らかい揚げ菓子があちこちで見られるようになります。
シンプルな材料で手軽に作れるのに、とびきり美味しいこのお菓子は、飾らないサン・テティエンヌの人々の気さくな気質をよく表しているようです。
➡ サン・テティエンヌ観光局公式サイト「ビューニュのレシピ」(フランス語)
ストラスブールのクグロフ Le Kougelhopf
Strasbourg, France
アルザスの伝統菓子「クグロフ」は、レーズンなどのドライフルーを入れたふんわりブリオッシュ。
デザートとしてはもちろん、アペリティフと一緒に、あるいは朝食にも登場するなど、地元ではとても身近なお菓子です。
家で気軽に楽しめるのはもちろん、パーティーやおもてなしにもぴったりの万能スイーツ。
伝統的な模様が施された、ストラスブール近郊・スフレンハイム産の陶器製クグロフ型も人気で、お土産としても喜ばれます。
トゥールーズのフェネトラ Le Fénétra
Toulouse, France
「ガトー・デュ・フェネトラ ® 」は、アーモンド、レモン、アプリコットを使った軽やかな食感のケーキで、夏になると食べたくなるトゥールーズの伝統菓子です。
タルト生地の上にレモンジャムとレモンコンフィ(砂糖漬け)をのせ、さらにアーモンド風味のダコワーズ生地でふんわりと包み込んだ、爽やかで奥行きのある味わいが魅力です。
その起源は古く、ガロ・ローマ時代には死者を偲ぶ祭りで食べられていたとされ、時を経て、トゥールーズでは日曜日の家族の食卓に欠かせない定番デザートとして親しまれるようになりました。
なお、このお菓子は1963年にオート=ガロンヌ県の製菓業者によって商標登録もされています。
➡ トゥールーズ観光局公式サイト(英語)
トゥールのヌガーLe Nougat de Tours
Tours, France
「ヌガー・ド・トゥール」は、一般的なヌガーとは異なり、タルト生地の上にアーモンドプードルを使ったねっとり食感の生地を重ね、その中にアプリコットジャムとフルーツのコンフィ(砂糖漬け)を閉じ込めた、日持ちのする焼き菓子です。
そのルーツは16世紀、アンボワーズに滞在していたレオナルド・ダ・ヴィンチにまでさかのぼると言われています。彼が好んだとされるアーモンドとフルーツのコンフィを使っていることから、そうした伝承が残っています。
長らく忘れられていたこのレシピを掘り起こし、1990年代に改めて世に広めたのは、星付きシェフのシャルル・バリエ。現在ではアンドル=エ=ロワール県内のおよそ20軒のパティスリーで作られ、地元の名物として親しまれています。
➡ トゥール観光局公式サイト(英語)
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by France.fr編集部
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