スイーツ愛好家 ムッシュサトウさんに聞くフランスのスイーツ事情

言わずと知れたスイーツ大国フランス。クラシックなお菓子から芸術性をもとめた独創的な作品まで、種類豊富なフランスのスイーツは世界中の人々を魅了し続けています。今回は、パリ在住経験のあるスイーツ愛好家として幅広く活躍されているムッシュサトウさんに、フランスのスイーツ事情について伺いました。

本日は、インタビューをお受けいただきありがとうございます。ムッシュサトウさんは、SNSでの発信だけでなく、ライターやスイーツ監修のお仕事など幅広くご活躍していらっしゃいます。最初に活動を始めたきっかけは何だったのでしょうか。

もともとスイーツが好きだったんですよね。2016年頃よりフランスに関わる仕事をはじめ、いずれ移住する流れとなるのですが、住んでみてよりその芸術性や美しさに一層惹かれるようになりました。自分の食べたスイーツをカメラに収めてSNSで共有したところ、同じようにスイーツが好きな方から反応をもらえるようになり、そこからスイーツ好きの輪が広がり、今の活動につながりました。
フランスでは、大体17時半から18時くらいには仕事が終えられたので、その後でもパティスリーはほとんどまだ開いていて、特に夏場は日が暮れるのも遅かったので、仕事終わりにもよくスイーツ巡りをすることができました。


現在は帰国されて、日本でもスイーツ巡りをされていますね。ムッシュサトウさんから見て、フランスのスイーツには日本と比べてどんな特徴があると感じますか?

フランスのスイーツは、まずクラシックを大事にしていると思います。パティスリーのショーケースには昔ながらのお菓子が常に並べられています。例えば、焼き菓子にラム酒にたっぷりしみこませた「ババ・オ・ラム」のような、伝統的なフランスのお菓子。日本では、あまりこのようなお酒の強いお菓子はウケが良くないようで、あまり見る機会がないのですが、パリだと大体のお店には置いてあります。



2パリ最古のパティスリーStohrerババオラムパリ最古のパティスリーStohrerババオラム©ムッシュサトウ


それから、フランスはバターや小麦粉など素材がおいしいので、焼き菓子が多いイメージです。シンプルな作りだけどおいしいスイーツがたくさんあります。

そして、流通期間の短い果物を使ったスイーツが豊富なのも特徴だと思います。例えば、ミラベルやアプリコットは生で食べられる時期が一年のうち2~4週間しかありません。でもその期間だけ、生の果物を使ったタルトがお店に並ぶので、季節性を感じます。このように時期がとても限定された果物を使うスイーツは、日本では限られたお店でしか見られないのですが、フランスではパティスリーだけでなくブランジュリー(パン屋)など比較的いろんな場所で求められるのも魅力です。黒イチジクなど、日本では超高級とされる果物でも、フランスのスーパーやマルシェで手ごろにたくさん手に入るので、こうした希少なフルーツをフレッシュな状態でふんだんに使ったスイーツが楽しめるのはフランスならではだと思います。



3パリ最古のパティスリーStohrerフランボワーズのタルト バレンタインのハート型パリ最古のパティスリーStohrerフランボワーズのタルト バレンタインのハート型©ムッシュサトウ

ムッシュサトウさんがパリで食べた、特に印象に残っているスイーツを教えてください。

パリ最古といわれるパティスリー「Stohrer(ストレー)」 (外部リンク) のスイーツを食べた時には衝撃を受けました。今やスイーツの都と称されるパリのスイーツ文化の原点となったお店で、先のババ・オ・ラムをパリ中、その後世界へと広めたのもここだと言われています。それでいて、カジュアルに食べに行ける雰囲気なので、とてもお気に入りでした。

また、僕はクラシックなお菓子だけでなく、新しいものや独創的なものも常に探求しています。それでいうと、最近話題のホテル・ムーリスのパティシエ、Cédric Grolet(セドリック・グロレ)氏による果物の形をそのまま模したスイーツは、僕のミーハー心を捉えました。見た目が美しくて綺麗なスイーツは、それがプレートに乗って運ばれてきた段階からワクワクさせてくれます。そういった意味で、僕は見た目も味の一つだと考えています。

フランスのスイーツの芸術性や美しさは、ムッシュサトウさんの活動のきっかけにもなったとおっしゃっていましたね。

フランスのパティスリーのショーケースには、日本で良く見るホールケーキを分割した三角形のケーキはほとんどありません。大体が丸い形のタルトなどで、一個一個に丁寧に装飾がされています。手間がかかっていることは一目瞭然で、その分見た目も豪華で美しく、思わず欲しくなってしまうんです。また、普段は丸いタルトがバレンタインの時期にだけ、特別にハート形になって並べられていたりするなど、時宜を得た粋な計らいも多く見られます。

4Cyril LignacスペシャリテのキャラメルムースCyril Lignacスペシャリテのキャラメルムース。右はバレンタインのハート型©ムッシュサトウ


僕は毎回スイーツの写真を撮ってSNSや記事で紹介しているのですが、このように装飾にこだわっているフランスのスイーツは、あとから写真を見てもどこで食べたスイーツなのかすぐに見分けがつきます。そういったところで、ムッシュサトウの活動と相性が良かったとも言えますね。


パリ以外の地方のスイーツも試しましたか?地方菓子ならではの魅力を教えてください。

パリに住んでいた時は、スイーツ巡りの目的でいろいろな地方を訪れました。
中でも特に好きだったのはナントです。パリから電車で1時間ちょっとで行ける距離で、街自体も小さいので1日2日で回れてしまいます。ナント「ガトーナンテ」という焼き菓子が有名です。クラシックなお店ではそのまま素朴で伝統的な形のガトーナンテが置いてあるのですが、新生系のパティスリーや、有名パティシエたちの手にかかると、お洒落で洗練された新しい作品となって売られているので、それらを見比べたり食べ比べたりするのが楽しかったです。

6ナンテ地方の銘菓ガトーナンテナント地方銘菓ガトーナンテ©ムッシュサトウ


6ナントの地方の有名パティシエVincent Guerlaisによるモダンなガトーナンテ 名古屋に出店した彼の日本第一号店でも買えますナントの有名パティシエVincent Guerlaisによるモダンなガトーナンテ。名古屋に出店した彼の日本第一号店でも買えます。©ムッシュサトウ



また、馴染み深いのは「カヌレ」で有名なボルドーです。ボルドーにはカヌレのお店だけで何店舗もあって、しかもものすごく安く売っているんです。日本でも最近カヌレが流行っていて、一個300円や400円くらいで買えますが、本場では1ユーロに満たない金額で売られています。
7ボルドーのカヌレ クリーム入りもボルドーのカヌレ_クリーム入りも©ムッシュサトウ


国境と接している地域では、スイーツも隣国の文化の影響を受けているので面白いですね。例えば、イタリアに近い南フランスのニースではジェラートが美味しかったです。北フランスのリールでは「ゴーフル」というお菓子が有名ですが、ベルギーでよく食べられるワッフルの文化と影響し合っていますね。そして東フランスのアルザスは、ドイツっぽい豪快なスイーツが多かった印象があります。


魅力的なスイーツにあふれたフランスの人々にとって、スイーツはどんな存在なのでしょうか。また、どんな時にスイーツを食べるのでしょうか?

フランスでは、特別な時だけでなく、普段の生活の中でもスイーツ文化が根付いていると感じました。
例えば、レストランやカフェでセットを注文すると、ランチでも最後に必ずデザートがついてきます。フランムース・オ・ショコラなど、甘いものを老若男女問わず皆が食後に食べているのを見て、日本とギャップを感じました。
8昼食後のデザートにもよく食べられるフラン昼食後のデザートにもよく食べられるフラン©ムッシュサトウ


また、フランス人のお菓子に対するこだわりを実感したエピソードがあります。日本でお昼に菓子パンを食べる感覚で、ランチにクロワッサンやパン・オ・ショコラを食べていたら、フランス人の同僚に「それはおかしい」と言われてしまったのです。ヴィエノワズリーは朝以外には食べないという暗黙のルールがフランスにはあるようです。
もう一つ印象的だったのは、取引先の会社から年末のグリーティングカードと一緒に高級チョコレートが送られてきたことです。気の利いた計らいに思わず感心しました。チョコレートやマカロンなどのバリエーションが豊富スイーツは、様々なシチュエーションでちょっとしたギフトとして使われています。自分でも取り入れたいと思いましたね。

ムッシュサトウさん、本日は貴重なお話をありがとうございました。


9ムッシュサトウプロフィール写真
Profile(敬称略)
ムッシュサトウ
パリ在住経験や年間多くのスイーツを堪能する中で、SNSで日々美味しい写真を投稿している。スイーツ監修に加え、スイーツライターやブランドアンバサダーとしても幅広く活動中。
Instagram:sugar_paris (外部リンク)
Twitter:sugar_parisJPN (外部リンク)

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