ステージ1 リモージュからペリグーへ(92km・4日間)
Limoges, France
ヴェズレーの道(Via Lemovicensis)をリモージュから歩き始めると、まずはリムーザン地方の穏やかな田園風景が広がります。巡礼路はシャリュを経て、ラ・コキーユへと続き、やがてドルドーニュ渓谷の豊かな自然に抱かれたペリゴール地方へ入ります。
中世の趣を色濃く残す村々や、牧草地、木立に囲まれたなだらかな丘陵を歩いていると、フランスの農村ならではの素朴で豊かな風景が広がります。
道中には、地元の食材を味わえるレストランや、ロマネスク様式の教会、中世の城なども点在し、巡礼の合間に立ち寄る楽しみも尽きません。
このステージ最大の見どころは、「芸術と歴史の街(Ville d'art et d'histoire)」に認定されているペリグーです。
まず訪れたいのは、街のシンボルであり、ユネスコ世界遺産「フランスのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」の構成資産にも登録されているサン=フロン大聖堂(Cathédrale Saint-Front de Périgueux)。ビザンティン建築の影響を受けた5つのドームが特徴で、ペリグーを代表する歴史的建造物です。
続いて、古代ローマ都市の遺跡が残るヴェゾーヌ遺跡地区(Cité de Vésone)へ。ガロ・ローマ時代の面影を今に伝えるこの地区では、ローマ帝国時代の歴史に触れることができます。
運河沿いの穏やかな景色を楽しんだ後は、西へ足を延ばし、シャンスラードを訪れてみましょう。
ここには1132年創建のノートルダム・ド・シャンスラード修道院(Abbaye Notre-Dame de Chancelade)があります。ロマネスク建築の美しい修道院で、現在も巡礼者を静かに迎えています。
ペリグー周辺のおすすめ宿泊先
シャンスラードの入口に建つレイナ城(Château des Reynats)は、19世紀に建てられたシャトーホテルです。
樹齢数百年の木々に囲まれた広い公園の中にあり、スパや上質なガストロノミー・レストランも備えています。友人同士で歩く巡礼旅の締めくくりに、ゆったりと疲れを癒やせる宿です。
ステージ2 ペリグーからモン・ド・マルサンへ(193km・10日間)
Mont-de-Marsan, France
ペリグーを後にし、巡礼路はベルジュラックへ向かいます。
ギュイエンヌ地方では、ブドウ畑や森、牧草地が織りなす穏やかな風景の中を歩きながら、シャラニャック、ベルジュラック、マルヴェラン、サント=フォワ=ラ=グランド、ロックブリュヌ、バザス、ブリオ=ベルゴンス、ロックフォールなどの町や村を巡ります。
ガロンヌ川を渡ると、ランド県に広がる約100万ヘクタールの広大な松林が迎えてくれます。18世紀に植林されたこの森は、どこまでも真っすぐ続く松並木が印象的なエリアです。
一方で、小さなロマネスク様式の教会や奇跡の泉、さまざまな伝説が残る場所などにも立ち寄ることができ、歩くたびに新たな発見があります。
さらに南へ進むと、塩分を含む湧水で知られるシャロス地方へ。トウモロコシ畑や家禽の飼育が盛んなこの地域は、ベアルン地方の風景へとゆるやかにつながっていきます。
このステージのゴール、モン・ド・マルサンでは、ぜひ1日かけて街を散策してみましょう。
ランド県の県都であるこの街は、30年以上にわたり20世紀初頭の具象彫刻を紹介する街づくりを進めてきました。市内のあちこちに彫刻作品が展示されており、「彫刻の都」とも呼ばれています。その魅力を象徴するのが、彫刻を専門とするデスピオ=ヴレリック美術館(Musée Despiau-Wlérick)です。
また、モン・ド・マルサンは「三つの川の街」としても知られています。
街歩きを楽しんだ後は、ミドゥーズ川(Midouze)沿いへ足を延ばしてみましょう。都市自然公園(Parc Naturel Urbain)に指定された河畔では、四季折々の自然を感じながら心地よい散策を楽しめます。川沿いの遊歩道は、そのまま約15kmのハイキングコースへと続いています。
モン・ド・マルサンのおすすめ宿泊先
1938年創業のオテル・レストラン・デ・ピレネー(Hôtel-Restaurant des Pyrénées)は、地元で長く愛される名門ホテルです。
ガストロノミー・レストランや充実したワインセラーでも知られ、2020年には24室すべてを改装。元ラグビー選手のマルク・ジロー氏が営むホテルは、歴史ある建物にモダンな快適さと洗練された雰囲気を兼ね備えています。
ステージ3 モン・ド・マルサンからオルテズへ(55km・3日間)
Orthez, France
モン・ド・マルサンを出発すると、巡礼路はベアルン地方の穏やかな農村地帯へと続きます。
この地域では、ランド地方名産のトウモロコシをはじめとする穀物畑が広がり、なだらかな丘陵と緑豊かな谷が織りなす風景の中を歩きます。数多くの川や小川が流れる田園風景は美しく、歩くたびに異なる表情を見せてくれます。
道中ではアドゥール川(Adour)を渡り、さらにオルテズの街を流れるポー川(Gave de Pau)へ。木陰の多い川辺は、夏の巡礼でほっと一息つける休憩スポットです。
オルテズに到着したら、歴史ある旧市街を散策してみましょう。
モンカード城跡(Château Moncade)から中世の面影を残す旧橋(ポン・ヴュー)まで歩けば、この街の歴史を感じることができます。
また、ジャンヌ・ダルブレ博物館(Musée Jeanne d'Albret)では、ベアルン地方におけるプロテスタントの歴史や宗教改革について学ぶことができます。
宗教建築に興味がある方は、サン・ピエール教会(Église Saint-Pierre d'Orthez)の身廊や内陣もぜひ訪れてみてください。
オルテズのおすすめ宿泊先
宿泊するなら、15世紀創業の歴史あるオテル・ド・ラ・リュヌ(Hôtel de la Lune)がおすすめです。
現在は巡礼宿として親しまれており、1388年には中世の年代記作者ジャン・フロワサールも滞在したと伝えられています。
「月の宿」(Auberge à l'enseigne de la Lune)と呼ばれ、多くの著名人や巡礼者を迎えてきたという逸話が残る、巡礼路ならではの歴史ある宿です。
ステージ4 オルテズからサン=ジャン=ピエ=ド=ポーへ(65km・4日間)
Saint-Jean-Pied-de-Port, France
ランド地方の丘陵地帯を抜けると、巡礼路は徐々にピレネー山脈のふもとへ近づき、バスク地方らしい景観が広がります。
道中では、ソヴテール=ド=ベアルン(Sauveterre-de-Béarn)、サン=パレ(Saint-Palais)、オスタバ(Ostabat)を経て、ヴェズレーの道の終着点であるサン=ジャン=ピエ=ド=ポーへ到着します。
なかでもサン=パレには、1964年に建てられたジブラルタルの石碑(Stèle de Gibraltar)があります。ここは、トゥールの道、ヴェズレーの道、ル・ピュイの道の3つの巡礼路が交わる場所と伝えられています。
サン=ジャン=ピエ=ド=ポーは、巡礼文化が色濃く息づく街です。
18世紀に造られた「ローマ橋」の名で親しまれる橋を渡り、13世紀建立のサン・ジャック門(ユネスコ世界遺産)や、17世紀のシタデル、そして13世紀に起源を持つノートルダム・デュ・ブー・デュ・ポン教会を訪ねることができます。
この街には、フランス国内の4つの主要なサンチャゴ・デ・コンポステーラ巡礼路――トゥールの道、ヴェズレーの道、ピエモンの道、ル・ピュイの道――が集まります。
また、多くの巡礼者にとっては、スペインへ向かう最初の本格的な山岳区間の出発点でもあります。
サン=ジャン=ピエ=ド=ポーからロンセスバージェス参事会教会へ向かう「シーズ峠越え」は、約27kmに及ぶ険しい山岳ルートです。
この道には、シャルルマーニュ大帝の軍勢やローランの角笛の伝説など、中世叙事詩『ローランの歌』ゆかりの物語が数多く残されています。
サン=ジャン=ピエ=ド=ポーのおすすめ宿泊先
旧市街の中心に建つ17世紀の赤い鎧戸が印象的なバスク様式の家屋を利用したBeilari(ベイラリ)は、巡礼者に人気の宿です。
広々とした4つの客室に加え、庭やテラスでは宿泊者同士が夕食を囲み、巡礼の思い出を語り合うことができます。
サン=ジャン=ピエ=ド=ポーから先は、ピレネー山脈を越える約27kmの難関ルートが待っています。
サンチャゴ・デ・コンポステーラまでは、なお約800km。巡礼の旅はここからさらに続いていきます。
旅のアドバイス
ヴェズレーの道は起伏が比較的多く、巡礼者の数も他の主要ルートに比べると少ないため、ある程度の体力と持久力が求められます。
村と村の間隔が長い区間も多いため、水や行動食は余裕を持って準備しましょう。また、日曜日は商店が休業する地域も多いため、補給の計画を事前に立てておくと安心です。
出発前には、最新の公式ガイドや巡礼者向け情報サイトなどでルートや宿泊施設、通行状況を確認しておくことをおすすめします。

by Munoz Alicia
Journaliste
Journaliste passionnée, Alicia écrit sur le développement durable, l’environnement et les voyages. Sa passion pour la nature, les grands espaces et les sports outdoor imprègne ses récits.
