アール・ド・ヴィーヴルとアール・デコの街、レンヌ3日間の旅

ブルターニュの古都レンヌで出会う、オドリコ家のモザイクの世界

ブルターニュ文化・遺産

Julien Mignot
© Julien Mignot

この記事は 0 分で読めます2025年11月5日に公開

ブルターニュ地方の中心都市レンヌは、穏やかな暮らしと温かい人々のもてなしで知られています。
木組みの家が立ち並ぶ街並み、歩行者天国の路地に並ぶテラス席、そして個性豊かな食文化。

魅力あふれるこの街には、実はあまり知られていないもうひとつの文化遺産があります。
それが「オドリコのモザイク」です。

レンヌ 木組みの家

木組みの家が立ち並ぶ街並み : © Franck Hamon

🏠1日目:旧市街を散策しながらアール・デコの美を発見

レンヌはパリから高速列車TGVでわずか1時間25分。
到着後の移動もとても簡単で、駅からメトロに乗れば、たった5分で歴史ある旧市街の中心に到着します。多くの主要ホテルもこのエリアに集まっています。ちなみに、レンヌは地下鉄が走る都市としては世界最小で、2本の自動運転路線があります。

中世の時代に築かれたレンヌの街は、独特の形をしています。モルドレーズ門を通ると、かつての城壁の名残を見ることができ、その内側には石畳の歩行者専用路が網の目のように広がっています。通りを歩きながら、カフェやブティック、レストランのテラスをのぞけば、この街ならではの“アール・ド・ヴィーヴル(暮らしの美学)”を自然と感じられるでしょう。

レンヌは学生の街としても知られており、約7万7千人の若者が世界各国から集まっています。そのため、街全体が親しみやすく、にぎやかで活気にあふれています。

木組みの家が立ち並ぶ旧市街は徒歩で気軽に散策でき、街歩きの途中では、美しい広場や印象的な建築にも出会えます。ブルターニュ高等法院(Parlement de Bretagne)は一年を通して見学可能で、豪華な装飾が見どころ。円形のファサードが特徴的なオペラ座や、ローマのサン・ピエトロ大聖堂を思わせる壮麗な大聖堂も必見です。

ブルターニュ高等法院(Parlement de Bretagne)

ブルターニュ高等法院(Parlement de Bretagne) : © Franck Hamon


ブルターニュ高等法院(Parlement de Bretagne)

ブルターニュ高等法院(Parlement de Bretagne) : © Julien Mignot

オドリコのモザイク : レンヌが誇る唯一無二の文化遺産

そのなかでも見逃せないのが「オドリコのモザイク」。
オドリコは日本語の「踊り子」とはもちろん関係なく、イタリア出身のモザイク職人一家の名です。

- サン・ジョルジュ屋内プール(Piscine Saint-Georges)

Piscine Saint-Georges, Rue Gambetta, Rennes, France

19世紀末から20世紀中頃にかけて活躍し、パリのオペラ座(ガルニエ宮)の装飾にも携わったのち、レンヌに拠点を構えました。
商店、学校、教会、公共建築、レストランなど、市内のいたるところに彼らの色鮮やかな作品を見ることができます。
なかでも、建築雑誌『Architecture Digest』が「世界で最も美しいプール10選」に選んだ サン・ジョルジュ市民プール は、アール・デコの傑作です。

サン・ジョルジュ市民プール

サン・ジョルジュ市民プール(Piscine Saint-Georges) : © Julien Mignot

観光案内所ではオドリコのモザイクをめぐるガイドツアーも実施されていますが、街歩きの途中でふらりとお店の扉を開けるだけでも作品に出会えるのがレンヌの楽しさです。

🍽️立ち寄りたい美味しいアドレス😋

- クレープリー・ブルトンヌ

7 Rue Joseph Sauveur, Rennes, France

La Crêperie Bretone
オドリコ家がかつて暮らしていた家を利用したクレープ店。
地元の職人によって丁寧に修復されたモザイクの中で、伝統的なそば粉のガレットを味わえます。

La Crêperie Bretone

かつてのオドリコ家La Crêperie Bretoneに残る金色のモザイク : © Franck Hamon

Maison Odorico à Rennes
旧オドリコ邸 La Crêperie Bretone(フランス語)
Maison Odorico — tourisme-rennes.com

- ショコラティエ イヴァン・シュヴァリエ (ショップ)

9 Rue de Nemours, Rennes, France

Yvan Chevalier
日本でも人気の高いショコラティエ。美しいガトーやボンボン・ショコラが並びます。
https://www.yvanchevalier.com/

イヴァン・シュヴァリエはシュヴロン通りに製菓を行うアトリエを備えたショップもあります。こちらでは一般の方が参加できる製菓教室も行われています。

L'atelier boutique
📍2 Rue des Chevrons, Rennes

https://www.yvanchevalier.com/categorie-produit/cours/ イヴァン・シュヴァリエの製菓教室(フランス語)


🍽️2日目:美食とアートをめぐる一日

- リス広場の市場(Marché des Lices)

Marché des Lices, Place des Lices, Rennes, France

週末のレンヌで欠かせないのが、リス広場の市場(Marché des Lices)。
400年以上の歴史を誇るこの市場は、城壁沿いのリス広場で毎週土曜日の朝に開かれ、地元の生産者たちが集まります。地元の人々はもちろん、観光客にも人気のスポットで、フランスで最も大きい屋外市場のひとつとして知られています。

ここでは、海と大地の恵みがずらり。魚介類や野菜、果物などが豊富に並び、とくにカンカル産の牡蠣は必ず味わいたい名物です。
ブルターニュ地方はフランスで最も有機農業が発展している地域でもあり、出店する生産者たちも質の高い食材を誇りにしています。

市場での定番グルメといえば「ガレット・ソシス」。
その場で焼いたソーセージを、そば粉のガレット(クレープ)で包んだシンプルな一品です。
価格は2.5〜3ユーロほどと手ごろで、誰からも愛されるブルターニュのソウルフードです。

ガレット・ソシス

ガレット・ソシス : © Julien Mignot

地元の温もりにあふれるこの市場には、有名シェフの姿も見られます。
たとえば、ミシュラン星付きレストランのシェフ、ヴィルジニー・ジボワール(Virginie Giboire)のRacinesと、ジュリアン・ルマリエ(Julien Lemarié)のIMA
どちらのレストランも市場から徒歩圏内です。

- レストラン Racines

4 Passage Antoinette Caillot, Rennes, France

- レストラン IMA

20 Boulevard de la Tour d'Auvergne, Rennes, France

名画と出会う美術館めぐり

- レンヌ美術館

Musée des Beaux-Arts, Quai Emile Zola, Rennes, France

午後はレンヌ美術館 Musée des beaux-arts へ足を運び、時代を超えて受け継がれてきた名画の数々を鑑賞しましょう。

古代から現代まで、幅広い時代の作品が揃っています。
ルネサンス期の絵画はもちろん、ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの「新生児」やルーベンスの「虎狩り」、カイユボットの印象派作品、そしてピカソの名作など、世界的に知られる傑作が並びます。

レンヌはアートスポットが充実しており、現代美術ではブルターニュ地方現代アートセンター FRAC Bretagne 、旧魚市場跡を改装したラ・クリエLa Criée、キャラントメットルキューブ40mCubeがあるほか、地域の歴史を紹介するブルターニュ博物館も訪れたい場所です。

また、レンヌ駅の近くには少し風変わりな場所、ル・グラン・ユイットLe Grand Huitがあります。ここは昔の回転木馬やメリーゴーランドなどを集め、懐かしのアール・フォラン(移動遊戯場)の世界が広がっています。館内にはカフェスペースもあり、食事やクラフトビールを楽しむこともできます。


🏰3日目:モン・サン・ミッシェル、サン・マロ、そして古城へ

レンヌは、ブルターニュの名高い名所を訪ねる旅の拠点としても理想的な場所です。北へ向かえば、世界遺産モン・サン・ミッシェルや城壁に囲まれた港町サン・マロ、そして「エメラルド海岸」と呼ばれる美しい海岸線へも、バスや列車で1時間以内で行くことができます。日帰りでも十分に満喫できる、非日常の小旅行が楽しめます。

また、レンヌから45分圏内には他にも魅力的な見どころがあります。東には、ヴィトレ城やヨーロッパ最大級の中世の要塞として知られるフジェール城、西には、アーサー王や円卓の騎士伝説の舞台とされるブロセリアンドの森が広がっています。どの目的地も、それぞれにブルターニュの神秘と物語を感じさせてくれます。

タボール公園を散策 ― “庭園の王子”と呼ばれる名園へ

- タボール公園(Parc du Thabor)

Parc du Thabor, Place Saint-Mélaine, Rennes, France

日曜日は、レンヌの中心部から徒歩5〜10分の場所にあるタボール公園を訪れてみましょう。
「庭園の王子」と称されるこの名園は、約10ヘクタールの広さを誇り、フランス式庭園とイギリス式庭園が美しく調和しています。園内には見事な古木や、フランス国内外の著名人の名を冠した2,000種類以上のバラが咲くバラ園もあります。

年間を通してコンサートやフェスティバルが開催され、地元の人々の憩いの場として親しまれています。家族連れの散歩はもちろん、園内のレストランのテラスでひと休みするのもおすすめ。
きっと、レンヌらしい“アール・ド・ヴィーヴル(暮らしの美学)”を感じられることでしょう。

タボール公園 Parc du Thabor

タボール公園 Parc du Thabor : © Nicolas Joubard



by ファブリス・ マズワール

Destination Rennes 編集責任者

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