ヴォージュの山あいで過ごす冬の家族旅

素朴な自然と温もりに出会う、フランス東部の冬景色

ヴォージュ山脈自然&アウトドア・アクティビティ

Laure Decailly
© Laure Decailly

この記事は 0 分で読めます2025年11月14日に公開

手つかずの森、雄大な湖、凍りつく滝、雪をまとった尾根――。
ヴォージュ山脈は、穏やかさと静けさに包まれた、守られた自然の宝箱です。

壮大なパノラマの奥には、豊かな文化遺産や美食、伝統工芸など、さまざまな魅力がひっそりと息づいています。
バロン山地(Ballons)からジェラルメ(Gérardmer)、そしてラ・ブレス(La Bresse)へ。
家族みんなで楽しめる、心ほどける・インスピレーションあふれる・遊び心満載・身体が喜ぶ——そんな冬の旅へとご案内します。

1日目:ルミルモンからフレッス・シュル・モゼルへ(33km)

Fresse-sur-Moselle, France

ヘルメットとヘッドランプを装着して、いざ出発!
旅の始まりは、ロレーヌ公領時代の銅鉱山跡をめぐる、オート=ヴォージュ自然地域公園。
1560年から1761年にかけて掘られたティヨ(Le Thillot)のオート=ミーヌ(Hautes-Mynes)では、5歳以上の子どもから大人まで楽しめる、ユニークな地下探検が待っています(所要約1時間45分/ミュージアム見学を除く)。
鉱山の歴史や遺産を体感できる、家族旅のスタートにぴったりのスポットです。

ティヨからほど近いメゾン・カプデ(Maison Capdet)では、温かみのあるモダンな空間で、景色を楽しみながらランチタイムを。
ここは、最近改装されたレストラン兼オーベルジュで、この日の宿泊先にもなります。

午後はまずヴェ礼拝堂(Chapelle des Vés)から雄大なパノラマを望んだあと、標高770mのフェルム・ド・ノワールグット(Ferme de Noiregoutte)へ。
ここでは、家族で体験したい幻想的なひととき――ろうそくの明かりで巡るヤギ農場見学(約2時間)が待っています。

Laure Decailly
© Laure Decailly

2日目:ヴォージュ山地(Ballons des Vosges)からラ・ブレスへ(45km)

La Bresse, France

2日目は、アートの息づくスポットを巡る一日。

午前中は、個性あふれる創作の場「テアトル・デュ・プープルThéâtre du Peuple」へ。
1895年にモーリス・ポテシェによって創設され、歴史的記念物にも指定されている文化財です。
舞台の奥が森へと開かれているという独特の造りで、自然と芸術が一体となった空間が魅力です。

その後、ドリュモン山の麓へ移動し、モゼル川の源泉(Source de la Moselle)へ。
「水源の道(route des sources)」沿いにある小さな泉で、その始まりを確かめることができます。

昼食は、ふたつの谷に挟まれたメニル(Le Ménil)にある、現代的な雰囲気のホテル・レストラン「レ・サパン(Les Sapins)」でゆったりと。

ラ・ブレスへ向かう途中、コルニモン(Cornimont)で「ミュゼ・デ・1001ラシーヌ(Musée des 1001 Racines)」に立ち寄るのもおすすめ。
この博物館は、ヴォージュ出身のアーティスト、ミシェル・モーリスに捧げられた場所で、彼は57年もの間、周辺の森で見つけた木の根の自然な形を生かし、人物(ロレーヌ地方の小さな妖精「ソトレ」など)、動物、花、空想の情景を彫刻として生み出しました。
バリアフリー対応の約1時間の見学は、「魔法使いミシェル」と呼ばれた彼の世界観そのもの——楽しく、詩的で、驚きに満ち、唯一無二です。

ラ・ブレスに到着したら、ホテル・レジダンス「レ・ヴァレ(Les Vallées)」へ。
中心部に位置し、「ファミーユ・プリュス(Famille Plus)」(子連れファミリーに優しいサービスと設備がそろった、フランス公認の山岳リゾート認証)を取得した家族向けホテルです。
伝統的な美食レストラン、温水の屋内プール、ウェルネスエリア、電気自動車の充電スタンドなど、充実の設備で2泊の滞在を快適に過ごせます。

ヴォージュ山脈にある「1001ラシーヌ博物館」
© Laure Decailly - ヴォージュ山脈にある「1001ラシーヌ博物館」

3日目:ラ・ブレス=オーネック(La Bresse-Hohneck)で過ごす1日

La Bresse-Hohneck, Route de Vologne, La Bresse, France

この日は、グルメ、自然探訪、アクティビティが満喫できるラ・ブレス=オーネック (la Bresse-Hohneck)へ(ラ・ブレス中心部から約9km)。

到着したら、まずはそり遊びに挑戦してみませんか?
3歳から楽しめる多彩なコースがあり、専用コースを滑る「フライング・ドーナツ(Flying Donuts)」、全長900mのレールを滑走する「シュリット・マウンテン(Schlitte Mountain)」、自由に楽しむ雪そりなど、好みに合わせて選べます。

お昼は標高1250mに位置する山小屋風レストラン「ピエ・デュ・オーネック(Pied du Hohneck)」へ。
ムンスターチーズを使ったタルティフレット「ミュンスタフレット(munstiflette)」など、ヴォージュ山地の名物料理が味わえます。

食後は、白銀に輝く尾根からの絶景を楽しんだあと、山岳ガイドとともにスノーシュー・ハイキングへ。
針葉樹の森を進みながら、動物の足跡を追い、冬の植物を観察し、自然の音に耳を澄ませ、ガイドが語る伝説に触れる2時間30分の冬の自然体験を楽しめます。

アクティブな一日の締めくくりは、「オーベルジュ・ル・クーシュタ(Auberge Le Couchetat)」で。
地元食材を使った、ヴォージュ料理にアンデスのエッセンスを取り入れた創作“フュージョン”が楽しめるビストロノミーの人気店で、暖炉のぬくもりに包まれながら心地よい夕食のひとときを。

Laure Decailly
© Laure Decailly

4日目:ラ・ブレスからジェラルメへ(38km)

Gérardmer, France

4日目は、甘い香りからスタート。
まず訪れたいのは、職人パティシエ/ショコラティエ/コンフィズールのジャスティン・ヴェクスラーとその兄によって創業された「コンフィズリー・ジェロモワーズ(Confiserie Géromoise)」。
ヴォージュ地方の伝統的なキャンディづくりの秘密を、砂糖を加熱する工程から試食まで見学できます。店頭では、森で採れた植物やベリー、ハチミツ、プロポリス、モミの精油など、100%ヴォージュ産素材を使ったオーガニックの手作り菓子が並び、思わず手が伸びてしまうはず。

そのあとは、ロンジュメール湖(Longemer)を見下ろす道を進み、ジェラルメとミュンスターを結ぶためにナポレオン3世の命で掘られた「ロッシュ・デュ・ディアブル(Roche du Diable)トンネル」を抜けて、ランチタイムへ。
向かうのは標高1100mに位置する伝統的な山小屋レストラン「ラ・ショーム・ド・バルヴェルシュ(La Chaume de Balveurche)」。
ヴォージュ山脈を一望する絶景とともに、名物のマルケール(Marcaire)料理やあつあつのムンスター(Munster)チーズ料理など、地元の味を楽しめる人気の一軒です。

食後は、12歳以上・2名から参加できるユニークなアクティビティ「バトル・アーチェリー(Battle Archery)」に挑戦。
ペイントボールとドッジボールの中間のようなスポーツで、弓と先端がスポンジになった矢、保護マスクを装備してチーム対抗戦を楽しみます。家族で盛り上がること間違いなし!

ジェラルメに戻ったら、湖畔に佇む魅力的なホテルへチェックイン。
環境配慮ラベル「クレ・ヴェルト(Clef Verte)」を取得しており、「ロジュ・デュ・パルク(Les Loges du Parc)」では、野生動物をテーマにした客室や動物写真家とのコラボレーションルームなど、個性豊かな滞在が楽しめます。中心街へは徒歩や自転車で簡単にアクセスできるのも魅力です。

夕食は、ジェラルメが「ヴォージュの真珠」と呼ばれる所以を思わせる、温かみのある一軒「ビストロ・ド・ラ・ペルル(Bistrot de la Perle)」で。
旅の締めくくりにぴったりの心づくしの料理が楽しめます。

Laure Decailly
© Laure Decailly

5日目:ジェラルメで過ごす締めくくりの一日

Lac de Gérardmer, Gérardmer, France

家族で巡るオート=ヴォージュの旅の最終日は、ジェラルメの街歩きから。
徒歩や自転車で、魅力あふれる中心街を気ままに散策しましょう。

まずは教会そばの「スキーヤー村」へ。
ホットチョコレートを味わったり、メリーゴーラウンドに乗ったり、地元生産者や職人との交流を楽しんだりと、にぎやかな雰囲気に包まれます。

そのあと、街の通りを散策しながら、歴史あるグラン・オテルの向かいにある象徴的な「ティユル広場」へ。
周辺にはヴォージュ地方が誇る伝統産業、テキスタイルのブティックが並び、老舗の技や織物文化に触れられます。

軽めのランチは「メメ(Mémé)」で。
ヴィンテージ感ただようカフェ兼ショップで、店内の装飾とともに、ちょっとした軽食を味わいながら“時間旅行”のような気分が楽しめます。

旅の最後を飾るのは、ジェラルメ湖のほとりでゆったりと過ごす午後。
散歩をしながらカモを観察し、夕日が湖面を染めるまでの穏やかな時間を楽しんでください。

Laure Decailly
© Laure Decailly

アドバイスとおすすめポイント

ヴォージュ山脈を旅する際は、山岳ガイドと野生動物の保護について話をしてみたり、生産者から手仕事の製法について直接聞いてみたりと、地域の人々との交流を大切にしてみてください。

また、「静けさを尊重する心(Quiétude Attitude)」を意識し、地元の取り組みを応援し、環境への配慮に力を入れている宿泊施設を選ぶのも大切です。

この美しい土地を未来へ守り継ぐために、ひとつひとつの小さな行動が大きな意味を持っています。

by Decailly Laure

アトゥー・フランスのソーシャルメディア担当で、今ではイゼール県を“第二の故郷”と感じているロール。 山を愛する彼女は、各地を巡るたびに、その魅力を文章にのせて伝えることを楽しんでいます。

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