2025年7月8日、ツール・ド・フランス第4ステージの出発地となる北フランスの街、アミアン。 パリから電車で約1時間というアクセスの良さながら、日本ではまだあまり知られていない隠れた名所です。 今回は、そんなアミアンの見どころをぎゅっと詰め込んだ、徒歩または自転車でめぐるモデルコースをご紹介します。
アミアンは、パリから電車でわずか1時間、ロンドン、ブリュッセル、アムステルダムからのアクセスも良好な場所に位置しています。
まだあまり知られていない街ですが、実は建築、美食、自然、文化、そして歴史的遺産にあふれた宝箱のような存在です。
フランスを旅するなら、ぜひ見逃せない注目のデスティネーションです。
🏛 1日目|名建築とアートを楽しむ
ペレ塔
Tour Perret, Amiens, France近未来感漂う「ペレ塔」からスタート
駅の正面に立つ巨大なコンクリートの塔──その独特の存在感に、誰もが目を奪われることでしょう。
第二次世界大戦中、アミアンは激しい空襲に見舞われ、市中心部の多くが破壊されました。特に、通信と補給の要所だった駅周辺は甚大な被害を受けました。
それでも1940年、ドイツ占領下にありながらも復興計画が立ち上がり、その中で建設されたのがこの「ペレ塔 Tour Perret」です。これはフランス初の高層ビルであり、アミアンを建築革新の先駆けとなる都市へと導く象徴的存在となりました。
26階建てのこの塔は、当時ヨーロッパで最も高い超高層ビルとしてそびえ立ちます。まるで現代の鐘楼のように、廃墟から立ち上がったアミアンの再生を物語っています。

メゾン・ド・ジュール・ヴェルヌ
Maison de Jules Verne, Rue Charles Dubois, Amiens, France『八十日間世界一周』の生まれた家「メゾン・ド・ジュール・ヴェルヌ」
ベルフォール大通りを500メートルほど進み、線路を越えると、ひときわ目を引く「メゾン・ド・ジュール・ヴェルヌ Maison de Jules Verne」にたどり着きます。ここは、ジュール・ヴェルヌが1882年から1900年まで暮らしていた邸宅です。

世界中に数えきれないほどの読者を持つジュール・ヴェルヌのファンであれば、見逃すことはできません。彼が未来の妻オノリーヌと出会い、『八十日間世界一周』をはじめとする数々の「驚異の旅」シリーズを執筆したのが、このアミアンという街なのです。
現在、この家は彼の世界観と日常生活が詩的に交差するミュージアムとして一般公開されています。
ヴェルヌはアミアンに34年間暮らし、16年間にわたって市議会議員も務め、街の文化と政治に大きな影響を与えました。

シルク・ジュール・ヴェルヌ
Cirque Jules Verne - Pôle National Cirque Amiens, Place Longueville, Amiens, France幻想的な円形劇場「シルク・ジュール・ヴェルヌ」
ヴェルヌの家を出たら、「ジュール・ヴェルヌ大通り」をさらに500メートル進み、同じ名前を冠した「シルク・ジュール・ヴェルヌ Cirque Jules Verne」へ向かいましょう。
アミアンにおけるサーカスの伝統は、1845年までさかのぼります。当時は、聖ジャン祭 Foire de la Saint-Jean にあわせて毎年、木材で仮設のサーカス小屋が建てられ、祭りの後に取り壊されていました。
しかし1887年、常設のサーカス劇場を建てるという構想が実現します。中心となったのは当時の市長で、ジュール・ヴェルヌもこの計画を積極的に後押ししました。彼のサーカスへの愛情は、アミアン滞在中に執筆した小説『アドリア海の復讐 Mathias Sandorf 』(1883年)や『セザール・カスカベル César Cascabel 』(1889年)にも色濃く表れています。
設計を担当したのは、ギュスターヴ・エッフェルの門下生であるエミール・リキエ。こうして完成した「ジュール・ヴェルヌ・サーカス」は、現在ではフランスに現存する数少ない常設サーカス建築のひとつとして、時代の記憶を伝えています。
また、フェデリコ・フェリーニやジャン=ジャック・ベネックスといった映画監督たちが撮影場所として選んだことからも、その美しさと雰囲気の特別さがうかがえます。

アラゴン図書館
Bibliothèque Louis Aragon, Rue de la République, Amiens, Franceピカルディ美術館
Musée de Picardie, Rue Puvis de Chavannes, Amiens, France美しい建築に癒されるアラゴン図書館 & ピカルディ美術館
大通りを渡り、「レピュブリック通り」を5分ほど歩くと、まず目に入るのが美しい「ルイ・アラゴン図書館 Bibliothèque Louis Aragon」です。1825年に建てられたネオクラシック様式の建物で、かつて市を囲んでいた要塞の門から切り出された石灰岩が使われています。

そのすぐ先には、緑あふれるファサードと中庭が印象的な「ピカルディ美術館 Musée de Picardie 」が現れます。現在の建物は1867年に建設され、ナポレオン3世によるルーヴル美術館拡張計画をもとに設計されました。当時としては革新的な、最初から美術館として機能することを前提に設計された建築です。
館内に一歩足を踏み入れると、ロマン主義からモダンアートまでを融合させた壮麗な空間が広がります。ルーベンス、ドラクロワ、シャルダン、フラゴナール、ベーコン、デュビュッフェ、ミロ、ピカビア、ピカソなど、錚々たる芸術家たちの作品が並び、さらに先史時代やエジプト、中世にわたる充実したコレクションも見応え十分です。アート好きならきっと心に残る体験になるはずです。

🏛 2日目|大聖堂から旧市街 アミアン歴史散歩
トロワ・カイユー通り
Rue des 3 Cailloux, Amiens, Franceカフェとショッピングが楽しい「トロワ・カイユー通り」
美しい作品の余韻に浸りながら美術館を後にしたら、少し歩いて「トロワ・カイユー通り Rue des 3 Cailloux」へ向かいましょう。
ここはアミアン随一の歩行者専用道路で、個性的なブティックやティーサロン、ブラッスリー、カフェが立ち並び、常に多くの人で賑わっています。
もし時間に余裕があれば、ぜひ気ままに散策を。風を感じながら空を見上げると、通りのあちこちにアール・デコ様式の美しいファサードが顔をのぞかせていて、何気ない街歩きの中にもうれしい発見が待っています。

アミアンのノートルダム大聖堂
Cathédrale Notre-Dame d'Amiens, Place Notre Dame, Amiens, France圧倒的スケール アミアンのノートルダム大聖堂
アミアンの中心広場であるガンベッタ広場 Place Gambettaを通り過ぎると、周囲にはバーやブラッスリーが立ち並び、地元の人々の暮らしが感じられます。そのままヴェルジョー通りをまっすぐに5分ほど歩いていくと──
早くあの姿を見たい!という方は、ここで右に進んでみてください。
ついに姿を現すのが、壮麗な「アミアンのノートルダム大聖堂 Cathédrale Notre-Dame d'Amiens」です。世界最大級のゴシック建築で、そのスケールはパリのノートルダム大聖堂さえも中に収まってしまうほど。
ユネスコの世界遺産にも2度登録されたこの大聖堂は、ガイド付きツアーでその歴史や秘話を深く知ることができるほか、音声ガイドや自由見学も可能です。
さらに、7月・8月、そしてクリスマスシーズンの12月には、ファサードを彩る1時間のプロジェクションマッピング「Chroma」が開催され、子どもから大人まで幻想的なひとときを楽しめます。
鐘楼(ベフロワ)
Beffroi d'Amiens, Place Maurice Vast, Amiens, France町の誇り「世界遺産・鐘楼(ベフロワ)」
大聖堂とはまた違った歴史の風景に出会ってみませんか?
ガンベッタ広場を過ぎたら左に曲がってみてください。そこに現れるのが、「ベルギーとフランスの鐘楼群」の一つとしてユネスコ世界遺産にも登録されている「鐘楼(ベフロワ Beffroi )」です。
この鐘楼は、中世における自治の始まりを象徴する建築物。町の鐘を収め、憲章や財宝を保管し、評議会を開き、ときには見張り台や牢獄としても機能してきました。何世紀にもわたって、北フランスやベルギーの都市にとって、その繁栄と独立の証として重んじられてきた存在です。
このベフロワは「アール広場 place des Halles 」に面しており、近くにはチーズ屋さんやパン屋さん、パティスリー、魚屋、肉屋、青果店など、食の豊かさを感じさせる市場の屋台も並びます。グルメな旅には必見のスポットです。
サン・ルー地区
Saint-Leu, Rue Saint Leu, Amiens, France色彩あふれる水辺の旧市街「サン・ルー地区」
大聖堂の裏手に広がるのが、アミアンの歴史と風情を感じられるサン・ルー地区 Le quartier Saint-Leu。
ソンム川がゆったりと流れ、まるで絵本の中に入り込んだようなカラフルで趣のある街並みが魅力です。

中世から産業革命初期にかけては、水と水車が町の動力源となり、繊維業がアミアンの主産業として栄えました。その名残を感じさせるこのエリアは、散策にぴったりです。

サン・ピエール公園
Parc Saint-Pierre, Chemin de Halage, Amiens, France地元民の憩い「サン・ピエール公園」でひと休み
ベリュ河岸 Quai Bélu 沿いには雰囲気の良いレストランが並び、川辺のテラスで食事を楽しんだり、アイスクリーム片手にくつろいだりするのもおすすめです。

通りの端にある小さな橋を渡れば、すぐそこは緑豊かなサン・ピエール公園 Parc Saint-Pierre。旅の合間に、ほっと一息つける憩いの場所です。

🏛 3日目|静けさと彩りの水上庭園
オルティヨナージュ
54 Bd de Beauvillé, Amiens, France水上の楽園「オルティヨナージュ」
サン・ピエール公園からほど近くに、アミアンを代表するもうひとつの名所「オルティヨナージュ Hortillonnages」があります。
300ヘクタールにわたって広がる水路と、その間に浮かぶ無数の小島。それらは中世に野菜栽培のために造成されたもので、現在でも一部は菜園として活用されているほか、美しい庭園として手入れされています。

これらの「水上の庭園」は、伝統的な平底の小舟に乗って巡ることができ、まるで別世界に迷い込んだかのような静かな時間が流れます。
毎年5月から10月にかけては「国際ガーデンフェスティバル Festival international des jardins」も開催され、各島にランドスケープ、建築、アートなどのインスタレーションが展示され、より一層幻想的な風景が楽しめます。

徒歩でも自転車でも楽しめるこのコースは、時間が限られている場合は半日でさっと巡ることもできますし、じっくり街の魅力を味わいたい方には、すべてのスポットを訪れながら2泊3日でゆったり回るのもおすすめです。

by France.fr編集部
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