南仏プロヴァンスの中心に位置するアルルは、伝統や史跡を大切にする街です。ユネスコ世界遺産に登録されたローマ時代の遺跡やロマネスク様式のモニュメントを舞台に、年間を通して数々のイベントやお祭りが開催されています。
アルルの必見スポット
観光客が最も訪れるのは、紀元後90年に建てられた円形闘技場でしょう。ローマにあるコロセウムを彷彿とさせます。古代ではこの円形闘技場はグラディエーターたちによる戦いの舞台となっていました。
外のレストランから見た円形闘技場 ©_Lionel-Roux
また、アルルは手付かずの自然の宝庫でもあります。カマルグは自然保護地区であり、ユネスコ自然遺産に登録されています。ここにはさまざまな種類の渡り鳥が飛来し、フランスで唯一、ピンクフラミンゴが繁殖して生息している地域でもあります。カマルグで出会える動物は他にもいます。例えば闘牛用の雄牛。「マナード」と称する農家兼牧場で飼育されています。またカマルグ馬と呼ばれる白馬は「ガーディアン」と呼ばれるカウボーイたちの大切な仲間となっています。
ゴッホに愛されたアルル
アルルでは、夏でも冬でも、あふれる光を感じることができます。1888年から89年にかけて15ヶ月間アルルに滞在したフィンセント・ファン・ゴッホもアルルの陽光に魅せられた一人でした。豊かな光、コントラストのある色彩に触発されたゴッホは、「夕方のカフェテラス」や「ローヌ川の星月夜」、またはヒマワリのシリーズなど、彼のもっとも有名な作品をはじめ、300点以上ものデッサンや油彩画をここアルルで制作したのです。彼が絵に描いた場所は現在も残されており、ゴッホの軌跡を辿ることができますよ。
「夕方のカフェテラス」のモデルとなったカフェのあるフォーラム広場
アートと文化の街アルル
訪れる者に感性を刺激する体験をさせてくれるアルルは、今なおアーティストたちにインスピレーションを与え続けています。毎年夏にはアルル国際写真フェスティバル(2023年は7月3日~9月24日に開催)が開催され、世界的規模の写真の都としても知られています。
2021年に完成した、工場跡地に新設されたステンレス製のタワー、ルマ・アルル現代アートセンターも話題になりました。このアートセンターのデザインは、スペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館やパリのフォンダシオン・ルイ・ヴィトンを設計したアメリカ人建築家のフランク・ゲーリーによって手掛けられました。アーティスト・イン・レジデンスプログラムに参加するアーティストとエンジニア、デザイナーらが交流するエコシステムとしての場をコンセプトとした、大規模なプロジェクトです。
同じくアルルに魅せられたアーティストに、韓国人アーティストの李禹煥(リ・ウーファン)を挙げることができます。「アルルの街で思考が一新された」と語る李禹煥ですが、2022年4月より、16世紀から18世紀建造の館に彼のインスタレーションや彫刻、絵画などミニマル・アート作品が展示されています。李禹煥にとってアルルは、韓国の釜山、日本の直島に次いで、世界で3番目の常設展示の場となりました。作品が展示される館の改修は、日本人建築家の安藤忠雄が手掛けています。見学コースの冒頭に展示されている作品「Relatum – sky underneath」は二人共同の構想によるものです。
韓国人アーティストのリ・ウーファンの作品 ©Hélène Drouet
プロヴァンスのグルメを満喫する
アルルではプロヴァンスならではのライフスタイルを最大限に味わいましょう。毎週土曜日の朝にはリス大通りやクレマンソー大通りでマルシェが開かれ、2kmにわたって続く屋台でオリーブオイルやアルル産ソーセージ、カマルグ産の米など多種多様の特産品に触れることができます。多くのレストランで、カマルグやアルピーユ山脈で産出されるワインとともに郷土料理を味わうことができます。
史跡、自然、アート、グルメ…。アルル滞在中は五感が研ぎ澄まされることでしょう。どの季節も美しいアルル。さっそく旅の準備を始めましょう!