ブルゴーニュ産カシスのいろいろな楽しみ方

ブルゴーニュ地方が名声を得ているものは、高級ワインだけではありません。黒く輝く小さな木の実、ブルゴーニュ産カシスもそのひとつ。ニュイ・サン・ジョルジュNuits-Saint-Georgesのオート・コートHautes Côtesでのびのびと育ち、7月の収穫期には、ブドウ畑の横のカシス畑から、かぐわしい香りが漂います。1年を通してジャム、マスタード、コショウ、リキュール、香水などで楽しむことができます。

まろやかなクレーム・ド・カシス

ブルゴーニュでカシスが栽培されるようになったのは4世紀以上も前のこと。しかも、それは、どこにでもあるカシスというわけではありません。深い色と力強いアロマで名高いブルゴーニュ産黒カシスはカシスの女王であり、ロワイヤル・ド・ナプルRoyal de Naplesという品種との交配により、実をつけます。2品種とも小粒ですばらしい味わいです。果汁はビタミン豊富で、糖度が高く口当たりのよいクレーム・ド・カシスの原料になります。クレーム・ド・カシスは1841年にディジョンのルジェ・ラグット社Lejay-Lagouteが造ったのが始まりですが、同じくブルグーニュ地方の名産であるアリゴテ種を使った白ワインと合わせれば、かの有名なキールというカクテルになります。100%ブルゴーニュ産の食前酒(アペリティフ)です。

スイーツに

食べるのが大好きな人に朗報です。ブルゴーニュのカシス街道には、おいしいものがたくさんあります。小さな黒い木の実が描かれた看板をたどり、熱意あふれる生産者のお店に入れば、大きな銅なべでコトコトと煮られているカシスの香りを存分に楽しむことができます。フェルム・フリュイルージュFerme Fruirougeでは、想像力あふれるオリヴィエさん一家が、ブルゴーニュ産カシスをさまざまな製品に加工し、販売しています。ジャムやパート・ド・フリュイ(果物のピューレを固めたゼリー)は定番ですが、果肉を増やし、砂糖の量を控えめにしたブール・ド・カシス(カシス・バター)のような繊細なアレンジ商品もあります。タルトの底に塗ったり、肉料理に合わせたりするのにぴったりです。

お料理に

ブルゴーニュには、鼻にツンとくるようなマスタードはありません。カシスの香りをつけた味のよいマスタードは、特にとてもまろやかです。カシスは斬新な使い方もでき、ケチャップにしても意外なおいしさです。トマトの代わりにブルゴーニュ産カシスの果肉を用い、酢(もちろんカシスビネガー)とうまく配合されたスパイス類をひとつまみ混ぜればできあがり。予想外のやみつきになる味わいです。また、ブルゴーニュ産カシスの芽を乾燥させてつくる、黄土色とピンク色の混じったカシスペッパーも絶品で、ブルゴーニュのもっとも偉大なシェフ、パトリック・ベルトロン(ミシュランの星を獲得しているレストラン「ラ・コート・ドール・ルレ・ベルナール・ロワゾー」la Côte d’Or-Relais Bernard Loiseauのシェフ)も使っています。また、多くのパティシエやショコラティエたちに使われていて、スイーツにしてもとてもおいしいです。

香水に

カシスの芽が多くの香水につかわれていることをご存知ですか? カシスの芽からはフレッシュなウッディ系の香りのアブソリュート(植物の香りを抽出した香料)が抽出されます。この香りには、フローラル系のノート(香り)と合わさると、その香りを安定させるという性質があります。有名香水ブランドの調香師も、この香りにほれ込み、繊細な香水を作り出すために使用しています。このように、ブルゴーニュ産カシスのかなりの部分が(芽の状態で)香水づくりに利用されています。また、それだけではなく、ブルゴーニュ産カシスは医薬品にも使用されています。植物療法の分野では何世紀も前から、カシスの実や葉、芽は、さまざまな薬効があることで高く評価されてきました。

カシスの全てがわかる博物館カシシウム

ディジョン南部に位置するニュイ・サン・ジョルジュは、世界でもっとも偉大ないくつかの赤ワインの産地となっていますが、この小さな町には、カシシウムCassissiumというカシスのみをテーマとした博物館もあります。インタラクティブな展示をおこなっている博物館で、ここではブルゴーニュの「黒い金」が主役です。映画やビデオ、対話形式で操作できるコンピューターを用いて、生産者のノウハウを説明します。ブルゴーニュ産カシスについてもっと知りたい人や食に興味のある人は、カシシウムを運営するヴェドレーヌ社Védrenneのブティック(博物館の隣)も訪れてみてください。