マルセイユの欧州・地中海文明博物館(MuCEM)

欧州・地中海文明博物館(Musée des Civilisations de l’Europe et de la Méditerranée)、通称ミュセム(MuCeM)は、ヨーロッパと地中海の文化テーマにした唯一の博物館です。

MuCEMは、旧港ヴュー・ポール(Vieux Port)の入り口に海を臨んで建てられています。
かつて何世紀もの間、世界中から船で訪れた旅人たちがここに降り立ちました。

長きにわたる歴史に根ざしつつ、MuCEMは、宗教的、社会的、政治的に日々めまぐるしく変化する地中海世界の今を見据えています。

3つのスポットに展示される膨大なコレクション

マルセイユが誇る複合的文化施設MuCEMには、100万点近いオブジェや古文書が収蔵されています。

文化財と自然が融合した広さ4万㎡の施設は、史実に基づいた展示を行なう2つのスポットを中心に複数の建物で構成されています。

J4埠頭(Le J4)

アルジェリア生まれのフランス人建築家リュディ・リコリは、古い埠頭を、斬新な建築によって再整備しました。MuCEMの準常設展示スペースである地中海ギャラリー(Galerie de la Méditerranée)では、石器時代から現代に至るまでの地中海文明の歴史に触れることができます。

オーディトリアムや視聴覚スペースでは、討論会、各種スペクタクルの上演、映画の上映など変化に富むプログラムが提供されています。屋上庭園も一見の価値ありです。

サン=ジャン要塞(Le Fort Saint-Jean)

壮麗な歴史的建造物(大部分は17世紀の建築)、J4埠頭と115mのコンクリートの橋で結ばれています。サン=ジャン要塞は1962年まで軍用施設であり、MuCEMの開館を機に一般に解放されることになりました。ヴィラージュ・エ・ギャラリー・デ・オフィシエ(le village et la galerie des Officiers)とサン=ジャン教会(la chapelle Saint-Jean)では、常設展(工芸、習俗)を見ることができます。特別展はジョルジュ=アンリ・リヴィエール棟(le bâtiment Georges-Henri Rivière)で催されています。散策にぴったりな約15の地中海風庭園、マルセイユの街と海を一望できるルネ王の塔(la Tour duRoi René)も見逃せません。

注目の展示物としては、ガヴィオリ社の自動オルガン(国宝)、エルサレムの聖墳墓教会の模型(17世紀制作)、サキエと呼ばれるかつてナイル川流域で牛やロバを使って動かした水揚げ器などがあります。

上記の中心的な2つのスポットに加えて、忘れてはならないのが資料保全センター(CCR)です。建築家コリーヌ・ヴェッゾーニが手がけたベル・ドゥ・メ地区(quartier Belle de mai)にあるCCRには、貴重な文書、書籍、美術品が収蔵されています。

異文化コミュニケーションへの取り組み

MuCEMは、以下をその使命としています。

  • 地中海世界とそれ以外の世界で何世紀にもわたって維持されてきた関係を掘り下げる
  • 文明間で交わされる対話、合流、交換を推進する
  • 記憶(植民地支配の歴史、今なお深い根をおろす過去の紛争…)にまつわる研究に寄与する
  • 文化、帰属集団、あるいは習俗(宗教、食習慣、服装、音楽…)の違いを調査する
  • すべてのテーマはそれに適した専門多分野(人類学、社会学、考古学、あるいは歴史学)の眼識で検討されることとする

MuCEMのあゆみ

壮大なプロジェクトの起こりは昨日、今日の出来事ではありません。すべてはある博物館の移転から始まりました。

1884年、パリのトロカデロ民族誌学博物館(musée d’ethnographie du Trocadéro)の「フランスの間(ま)」(sale de France)の展示を移設することになり、1937年、これを引き継いだ芸術・民間伝承博物館(musée des arts et traditions populaires)が開館します。

1972年、博物館はブローニュの森にある順化園(Jardin d'Acclimatation)の近くに移転します。そして2000年、政府はマルセイユに移転することを発表しました。

2008年のマルセイユでの開館を予定し、博物館は2005年に閉館します。結局、MuCEMは、マルセイユ=プロヴァンスが欧州文化首都(Capitale Européenne de la Culture)となった2013年にあわせて開館しました。

Marseille 

1 Esplanade du J4, 13002 Marseille