断崖の絶景を見晴らすエトルタ庭園

フランス北西部ノルマンディー地方は、英仏海峡に面し、沿岸の絶景で名高い地方です。その沿岸地域で屈指の美しさを誇るのが、白亜の断崖で知られるエトルタの街です。断崖のひとつ、アモンの断崖の上には、ほかにはないユニークな名所「エトルタ庭園」があります。

この庭園の歴史は、1903年にフランスの女優マダム・テボーが、エトルタの断崖上にひとつの景観を作り出そうと決心した時に始まりました。テボーは、著名な印象派の画家クロード・モネの助けを借りて、庭のコンセプトを決めました。

モネはその後、何度もこの庭を訪れ、何時間もテラスで過ごし、『エトルタの断崖』と題された有名な連作を制作しました。断崖と海、海岸を見渡す眺望は、ジャン=バティスト・カミーユ・コロー、ウージェーヌ・ドラクロワ、エドゥアール・マネ、ギー・ド・モーパッサンなど、多くのアーティストや作家たちにインスピレーションを与えました。
2016年にはエトルタ庭園の新たな歴史が始まりました。ランドスケープ・デザイナーのアレクサンドル・グリヴコが、打ち捨てられていたこの庭園に、歴史を生かしつつ、新たな生命を吹き込んだのです。
グリヴコはコンセプトを考え直し、敷地を拡大し、以前からあった歴史的要素は残しつつも、前衛的なデザインのアイデアを付け加えました。彼のコンセプトは伝統的なモデルとは異なる、ネオ・フューチャリスト的な庭園というものです。見事に剪定された植物の密度やカットの仕方、形は革新的で、しかもどれもノルマンディーの自然をフィーチャーしたものになっています。「英仏海峡の波」「渦潮」「アルバトル海岸の断崖とアーチ」など、さまざまな形の植物を見ることができます。現在、庭園には15万本以上の植物が植えられています。

エトルタ庭園の中には、7つの庭がありますが、空間のまとめ方やコンセプト、歴史、美学という点では、すべて同じプロジェクトに基づいています。しかし、7つの庭には個性もあり、デザインや雰囲気、植物の種類、剪定の仕方、それぞれの世界観を完成させる現代彫刻の種類などが異なっています。エトルタ庭園は、芸術作品の素晴らしいコレクションを展示する屋外型の現代アート美術館としても構想されました。

前年度の成功に引き続き、エトルタ庭園では今年も現代彫刻の国際展示会「ドゥブル・ジュDouble Jeu」が行われます。2019年は5月から10月にかけて世界から25名のアーティストがエトルタ庭園で作品を展示し、芸術界の専門家で構成された審査員と一般の人々によって選ばれた3つの作品が受賞しました。

Double Jeu - コピー

Double Jeu 2020では『未来の庭園』という新しいテーマを掲げることで、エトルタ庭園は実験的な試みを続けています。寛ぎの場である庭は、訪れうる未来について思索するには理想的な場所です。エトルタ庭園は、自然と人間との関係、個人の自由と不適合に関する問題、環境革命、人工知能と技術の開発…といった、この時代の抱える問題を提起することにより、未来について考えることを提案しています。

常設展でも企画展でも、人間の本性や神性などの普遍的なテーマだけでなく、環境問題や我々を取り巻く世界に関する新しい知見など、現代社会に内在する諸問題も取り上げるよう心がけています。
2019年9月6日、エトルタの庭は「ヨーロピアン・ガーデン・アワード」の「歴史的公園または庭園開発」部門において1等に輝きました。
2016年のオープン以来、エトルタ庭園は年間およそ20万人の来場者を受け入れています。

この驚くべき場所を是非訪れてみてはいかがでしょうか。

さらに詳しく
エトルタ庭園公式サイト (外部リンク) (英語)