フランス観光親善大使2023 就任記念 大野均さんインタビュー

2023年フランス観光親善大使 大野均さんインタビュー

France.fr: このたびはフランス観光親善大使のお役目を引き受けてくださり、ありがとうございました。まずは、大野さんとフランスの関わりについて教えていただけますか。

大野(敬称略): はい。私が初めてフランスに行ったのは2005年、日本代表の合宿で滞在したリモージュでした。
それまで私の海外遠征地はニュージーランド、スコットランド、ウェールズなど英語圏が主でしたが、初めてそうでない言葉が話されている環境に、海外に来たなという感じを一層強く抱きました。また、街の印象もこれまでの国と比べて趣があるなと思いました。



大野さん ナルボンヌ


France.fr: 街の印象とおっしゃったのですが、選手の方が海外遠征される時はホテルと合宿地の往復ばかりされているのかと思っていましたが、実際に街を歩いてその土地の雰囲気を味わったり、店に入って美味しいものを召し上がる機会もあるのでしょうか。

大野: はい、ありましたね。とくに初めてフランスに行った2005年のリモージュでの合宿は印象に残っています。
リモージュはパリのシャルル・ド・ゴール空港からバスで5時間くらいかけて行くかなり田舎の方なんですけれど、そんな田舎にぽつんとタバコ屋がありまして。
タバコ屋の奥がバーなんですけれど、店先のおばあちゃんが奥からビールを出してくれる、その雰囲気が好きでしたね。
先輩と何度か通ううちに、何も言わなくても「はいはいビールね」という感じで奥からビールを注いで出してくれるようになりました。初めは体の大きな外国人が来たという目で見られていたようですが、ラグビー選手だということを話すと、おばあちゃんが「自分もラグビーが大好きだ」と話してくれまして。
ラグビーはヨーロッパの中で生まれたスポーツだというのは聞いていましたが、フランスでは独特のラグビー文化が培われているのだなと、おばあちゃんとのやりとりを通して感じました。


大野さん トゥールーズ

France.fr: ここからは、今年のワールドカップで日本代表が試合を行う土地についてお話を伺います。
昨年2022年にこれらの地を視察していただいた旅の印象を振りかえってみましょう。
まずはトゥールーズです。日本代表の試合が2試合行われ、ベースキャンプも置かれる土地ですから、日本のサポーターも多く行かれることでしょう。大野さんご自身が抱かれたトゥールーズの街の印象について教えてください。

大野: 自分は2007年、2017年と、トゥールーズで試合をしていますが、スタジアムはお客さんとの距離が近く、プレーしやすいグラウンドだなと思います。

2007年はフィジー代表と試合をし、下馬評ではフィジーが勝つと言われていたなかで日本代表が最後まで喰らいつきました。
結局4点差で負けてしまうんですが、日本がフィジーのゴール前まで迫った時はスタジアム中がジャポンコールに湧き、大きく背中を押された感触を今も覚えています。

トゥールーズでのオフはこの試合の翌日のたった一日だけですが、とても嬉しいことがありました。市内一周できる観光バスを降りる時にお金を払おうとしたら無料にしてくれたり、パブに入ってお会計をしようとしたら「お前らは昨日いい試合をした」と言っておごってくれたり…。試合には負けたけれど、なにより目の肥えたフランスのラグビーファンに認めてもらえたことが嬉しかったことを覚えています。


France.fr: 昨年2022年には、引退後の状態で初めてトゥールーズを視察していただきました。選手として滞在された時と比べて街の印象は変わりましたか。

大野: いえ、とくに変わりませんね。街の雰囲気はいいし、人は温かいし、日本代表と共にトゥールーズへ応援に来る方々は、間違いなくいい印象を持って帰ってくれると思います。

France.fr: それは有難いですね。トゥールーズやその周辺のオクシタニー地方、フランスの中でもとくにラグビー文化を強く感じる土地ですが、それと同時にジャパンフェスティバルなど開催するように親日派がとても多いエリアです。それは2007年、2017年の日本代表の活躍を現地の人がしっかり覚えているからなのかもしれません。



大野さん トゥールーズ スタジアム

France.fr: 日本代表がイングランドと戦うニースの印象はいかがですか。
大野: まずスタジアムですが、芝生のコンディションが良いのはもちろん、ロッカールームの椅子がレーシングカー仕様の椅子になっていたりする面白みがあって、海外のワールドカップに来たという雰囲気が味わえるスタジアムだと思います。隣にスポーツ博物館がありましたが、ラグビーファンは他のスポーツにも興味を持たれる方が多いので、ラグビーだけでない見どころがあるのもいいなと思いました。

ニースはスタジアムだけでなく、海岸沿いの遊歩道や、高台からの街を一望する景色など、「ザ・ニース」と言えるような絶景が印象的で、観光としても見どころが多いところですよね。


大野さん ニース


France.fr: ニースから足を伸ばし、トゥーロンにも出かけていただきました。観光での知名度はそれほど高くはないのですが、ラグビーファンの方がこの都市に寄せる思いはかなり強いようです。

大野: ええ、こちらのクラブには世界中のスーパースターが集まっています。スタジアムが街の中心にあって、彼らの試合を間近で見られるのは本当にうらやましいです。
それに、ここのスタジアムはどこか秩父宮ラグビー場を思わせるところがあります。街の中心でアクセスが良く、すぐ隣にビルがあるところなど、そっくりなんです。

観光親善大使特別サイトのトップ画像はトゥーロンのマイヨール・スタジアムで撮影されたものを使用しています】


大野さん トゥーロン


France.fr: 南フランスのプロヴァンス・コート・ダジュール地方には、ニースのほかにワールドカップの開催都市になっている都市がもう一つあります。マルセイユです。こちらの街の雰囲気はいかがでしたか。

大野: マルセイユのスタジアムは外から見ただけなのですが、かなり大きく、ここで試合が行われると想像するだけで楽しみです。ぜひ日本代表にここで勝ち進んで欲しいですね。
あれほど大都市なのに、旧港の真ん中に魚市場が出ているところなど、独特な雰囲気の街なのだなと感じました。



大野さん マルセイユ


France.fr: 最後に、日本代表が試合を行う三番目の都市、ナントについて伺います。
大野: 私がナントを訪れたのは南仏からの移動でしたので、街の雰囲気がガラッと変わったのを感じました。ヨーロッパ感がでてきたというのか。フランスなのに、全然違う国に来たような気がしました。
ナントで私が気に入ったのは、ガレット(そば粉のクレープ)屋さんです。美味しいし、気軽には入れますし。ガレットの中にはいろいろな具材が入るんですよね。けっこう変わったものがあって、私のにはアンドゥイユというホルモンのソーセージが包まれていました。フランスなのにどこか居酒屋っぽいメニューというのか。フランスに行ったら、もう一度あのガレットを食べてみたいです。
スタジアムの方はちょうど私が訪問した時が翌年のワールドカップに合わせて修復中だったのですが、それでもこちらのスタジアムの凄さがよくわかりました。下の方の席は選手目線で見られる一方、上の方の席はもう真上から見下ろすような感じなんです。お客さんの好みに合わせて席を選べる面白いスタジアムだと思います。



France.fr: ここまでワールドカップ開催都市の印象を伺ってまいりましたが、普段はどんなスタイルの旅行をなさっているのでしょう。

大野: 2007年のリモージュの所でもお話しましたけれど、自分はぷらっと街を歩いて、地元の人しか入っていないような店に入り、地元の人とコミュニケーションを取ってみるのが好きなんです。日本代表の時から、海外での試合の時や、日本で地方に行く時など、チームでまとまって動く日とは別に、一人だけでごはんを食べに行く日を作って出かけていました。別に自分は言葉が得意という訳ではないのですけれど、地元の方とのコミュニケーションが楽しくて。そういうスタイルは今も変わりませんね。



France.fr: 地元の食を通して現地の人と触れ合うというのは、旅の醍醐味ですよね。2023年のフランス観光親善大使として、これ以上にない資質を備えた方にお願いできて本当に光栄です。
今年一年、どうぞよろしくお願いいたします。

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