知っておきたい美食の認証制度~AOC、AOPなどの用語解説

ユネスコの無形文化遺産でもある「フランス人の美食」。これを支えているのは細かく規定された各種の規格・認証制度です。現在はフランスで生まれた独自の規格とヨーロッパの統一規格が混在しています。レストランやマルシェで賢いチョイスをするために、食料品の分野でよく見かける認証ラベルについて基本を押さえておきましょう。

A.O.C.(Appellation d’Origine Controlée)アー・オー・セー: 原産地管理呼称
1905年に始まったフランスの認証制度です。INAO(Institut National de l'Origine et de la Qualité)という組織が定めます。高級ワインの品質を保証する目的で生まれたものですが、現在はワイン以外にも広く適用されています。産品の原料や品種、飼育や生産方法について規定し、原産地の特徴が明確な産品について呼称の利用を認めて品質を認証するものです。

例えばワインならAOCによりどのような性質や特徴を持ったものなのかを事前に知ることができ、ソムリエはこれをもとに料理の席のワインを提案します。いっぱんに地方名>地域名>村名>畑名というように、いっぱんにその指し示す範囲が限定されるほど個性が明確で、質の高いワイン=高級なワインと考えられます。例えばブルゴーニュ地方の同じ年、同じ色のワインなら、ブルゴーニュ(地方名)>ヴォーヌ・ロマネ(村名)>ロマネ・コンティ(畑名)と範囲限定が進むにつれていっぱんに価格も上がります。価格は生産年や生産量などによっても大きく左右されます。AOC制度のほかに独自の格付けを導入している地域(たとえばボルドーのメドックやサンテミリオン地区のワイン)もあります。

A.O.P.(Appéllation d’Origine Protégée)アー・オー・ペー: 原産地保護呼称
フランスのAOCに倣って1992年に生まれたヨーロッパの原産地保護呼称です。AOCはAOPの一部を構成しています。産品の原産地を保証するもので、気候条件、日照、土壌、植生、飼料、先祖伝来の飼育や生産法などの地域特性が産品に反映されるという考え方です。産品が該当する地域で正当に生産されたものであることを証明します。フランスのAOCはおおむねAOPと見なされ、フランスのフロマージュ(=チーズ)も現在はAOP制度に組み込まれています。

I.G.P.(Indication Géographique Protégée)イー・ジェー・ペー: 地理的保護表示
生産地域に着目してEUで規定し、フランスではINAOが統括している規格です。品質や評判など産品の特性が限定された地域の特性に由来すること、言いかえればその土地の自然や気候、人的要因を反映していることを証明します。2009年8月以降、フランスのワインでそれまでVins de table ヴァン・ド・ターブルと分類されていた地酒はIGPに移行しました。AOPに準ずる位置づけで見直しもあります。スピリッツはIGP対象外です。

Le Label Rougeラベル・ルージュ: 赤ラベル
1960年代に導入されたフランスの食品品質保証マーク。生産から出荷に至るまでINAOにより厳しく管理されています。伝統製法に則った産品について生産者組合が申請して認可を得ます。味わいを確かめる官能検査も行い、赤ラベルがついたものは上等、格上と認められています。肉類、魚類などに多い印象がありますが、現在は小麦とパン、プロヴァンスハーブ、卵と家禽、果物と野菜、蜂蜜、苗木と種子、水産物の各分野にラベル・ルージュがあります。

Agriculture biologique (AB) アグリキュルチュール・ビオロジック:有機農産物
自然や環境に配慮した有機農法による生産物。殺虫剤など化学合成物を使用しない、輪作により土壌の再生を図る、有機肥料を利用する、遺伝子組み換え品を使用しないなどの規定があります。牧畜の場合では飼料は有機農産物に限られます。「ビオ」に特化したマルシェも各地で見られます。
フランスのロゴとEUのロゴ。

全国農業コンクール(Le Concours Général Agricole)
1870年に農業省が創設した品評会で、パリで毎年3月に行われる農業見本市に合わせて実施されます。分野別に3000名ほどの審査員が目隠しをした状態で試飲・試食を行い、出品の3分の1程度を優良品と認定し、金賞~銅賞までを与えます。ワインのほかチーズ、カキ、フォアグラなど対象は様々です。
ワイン分野では2013年に1万6千本余りが出品され、3000名の審査員により4000本弱のワインが受賞しました。そのほかの食品分野では2013年に1200ほどの品目が受賞しています。若手の生産者を表彰する制度もあります。

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