パリの人類博物館で『我食す、ゆえに我あり』展

2019年10月16日から2020年6月1日まで、人類博物館は注目を集めることでしょう。ここで私たちの食習慣をテーマにした展覧会が行われるのです。生きるのに欠かすことのできない日々の「食」を通して、歴史、世界の状況、そして未来を考えます。これを見ると、おなかがすいてきてしまいます!

パリの人類博物館では、私たちみんなに関わる「食」の問題を、生物学、文化、エコロジーなどさまざまな面から考える展覧会が開催されています。

『我食す、ゆえに我あり』展では、国立自然史博物館の科学者たちの研究成果が展示されています。その分野は、味の形成、テーブルマナー、美食外交、農業モデル、食の文化遺産、肉の消費、遺伝子組み換え生物、先祖たちの食、未来の食……といった具合にきわめて多岐にわたります。

私たちは何を食べているのか?

広さ650m²の会場では、ときどきびっくりするような演出に出会えます。エリゼ宮の食卓についたり、バーチャルな牛とダイエット法について話したり、たくさんの貴重な展示品や土壌のコレクションを眺めたり。パブロ・ピカソ、ジル・バルビエ、ピラール・アルバラシン、リウ・ボーリンなど近現代の芸術家たちの作品も展示されています。

「食」という大きなテーマを扱うこの展覧会は、3つの部分から構成されています。まず第1部で扱われるのは、人体という観点から考えた食。歴史、生物学、文化、味の形成、食の禁忌、性別と食の関係といったアプローチで迫ります。

動物性食品と植物性食品

第2部は、人間社会から見た食についてです。食を巡る政治、宗教、芸術、アイデンティティーに関する展示のあと、食が想像力をも育てることを表現した作品をご覧ください。

最後は、私たちが現在抱えている食の問題です。世界で食物の消費や生産がどのように行われているのかを考えます。動物性食品、植物性食品、水、発酵食品、未来の食物。これら5つの主要な食物から、現在そして未来の食について問いかけます。

動物か、食物か?

動物や植物が人間の食物となるためには、食の禁忌、特定の種を好んだり嫌ったりする味覚の伝統など、さまざまなハードルをクリアーし、文化的な意味で食べられることが許されなくてはいけません。インタラクティブな空間に、6種類の動物、植物が展示されます。

ある社会で、昆虫、牛、カモ、豚を食べるのに、別の社会では食べなかったりする理由も学ぶことができます。肉は、多くの社会で欠かすことのできない食べ物ですが、ほとんど食べない社会もあります。肉は食べ物の中では特別な存在で、体の栄養になるだけでなく、想像力も養ってくれます。

現在、肉を食べることは、倫理、エコロジー、公衆衛生の面から激しい議論を巻き起こしています。展覧会では、肉食に関わる様々な問題について考えます。人間の進化に肉食が果たした役割、増加する環境への負担、肉食をする社会としない社会、食べるために動物を殺すときの儀式的側面などについて学びます。

この展覧会では、世界で同時に行われている様々な食料生産方法――イヌイットやピグミーの狩猟・採集、ボースBeauce(パリ南西の穀倉地帯)の麦の集約農業、インドネシアのアブラヤシ栽培など――の違いについて知ることができます。

タンパク質豊富な昆虫は、肉の代わりになるのか

家畜の屋内飼育の様子がメディアで報道され、消費者は食品の生産環境に以前より高い関心を持つようになりました。しかし、どうすれば90億人もの人々をきちんと養うことができるのでしょう? 遺伝子組み換え生物、工場で作られた肉、非物質の食品、昆虫……。これらのうちいくつかの解決策はすでに存在しています。例えば昆虫はタンパク質豊富で、牛肉、豚肉、鶏肉の代わりになるとされています。

とはいえ、害虫を思い浮かべてしまう人もいて、昆虫は欧米ではなかなか食品として定着しません。いっぽう粉末食品は、すでに売っているスーパーマーケットもあります。